日曜日, 12月 31, 2017

2017 Best Album と、今年の総括。by Colstrains






聴くその時、初めて聴いて、凄いと思ったもの、それを新譜だと思いたい。

例えばだけれど、このベストアルバムにしたってそうだ。今はストリーミング、YouTube、はたまたTwitterの中の動画の中で新譜を発表することだってできる。でもそれが、CDだったり、レコードだったりと形になって、それからようやくその音楽を聴くのに、とても「タイムラグ」ができる。それがとてももどかしい。その時の感動を、発売した年にむりやり押し込めるのに、とても違和感を覚えるので、最後までずっと悩んでいたのだけれど、今年は発売年でくくったベストをA、今年新品でリイシューされたアナログ盤やCD編集盤などでまとめたベストをBとして、混合して並べるベストアルバムとした。






31

ANicholas Krgovich - In An Open Field (LP)



ストリーミングでは視聴できず、Bandcampでは視聴回数制限がかかっている。元ダーティ・プロジェクターズのメンバーで、その一端を感じられる部分も存在するが、作品全体としての完成度の高さは、Okada Tkuro氏の次回作の構想に一番合致しているようなAOR的な音像のような気がする。12月に知り、最近アナログ盤を入手した。



30

ADirty Projectors - Dirty Projectors (LP)


そのダーティ・プロジェクターズの現在がこのアルバム。もはやバンドの体をもっていないソロ作品としての自由な音像。過去の音に固着して低迷したり、方向性がダイナミックになりすぎて作風が壊れてしまうのではなく、己の根っこの部分を表現するための道具を、10年代的R&B的な音としただけで、時代に迎合するのとはわけが違うのだろう。発売当初にSpotifyでダウンロード後、アナログ盤を購入。3月頃の通勤に通っていた渋谷駅の京王井の頭線のホームを連想する。



29

AVisible Cloaks - Reassemblage (LP)


日本の80年代環境音楽/ニューエイジ音楽リバイバルの第一人者なんだけど、彼らの登場以前から、色んなところ(snsの口コミやYouTubeとか英語の音楽記事とか)で、この時代の音楽の再評価の波を感じていた。このアルバムが登場する事で、RAや音楽ライターのツイートなどから、複合的にこの作品の意味合いが広がったように思える。正直初めて聞いた時はピンとこなかった。この半年間でニューエイジ音楽ガイドを作る間に少しづつ聞き返し、電子音楽にありがちな「風化」に耐えうるクラシックになる様な気がしてきた。発売からしばらくたって良さがわかりアナログ盤を購入。最近でた12インチも良かった。



28

AAn Ancient Observer - Tigran Hamasyan (LP)


ティグランがやっとアルバムをCDだけじゃなくてレコードでも出してくれた。
これまでの格好いいコンテンポラリージャズな音と、近年のやや難解なECM作品の精神性を兼ねた、いわば集大成的なピアノソロ作品。アナログ盤にて所有。京都旅行中にも度々聴いていた。



27

AFleet Foxes - Crack-Up (LP)


過去の2作は非常に思い入れがあるアルバム。随分と時間が経って発売された今作は、音色こそ過去作と繋がったものではあるものの、展開がつい口ずさむような曲があるような素朴さが剥ぎ取られ、音量の大小も広がった、ややプログレッシブな展開となっている。ジャケット写真は、日本の福井県にある(自殺の名所ともいわれる)東尋坊が使用されている。発売当時、金銭的に厳しく他の好きなアーティストのアルバム予約を取りやめたのだが、今作は購入した。



26

AThundercat - Drunk (10box)


春頃の発売当時にとても話題になった。発表されてすぐSpotifyでダウンロードし、ダーティ・プロジェクターズと共に度々通勤の電車で聴いた。ジャケットも印象的。しばらく経ち10インチボックスが発売され購入した。AOR的なそれと、ジャズ的なそれと、もちろんヒップホップなそれと、再評価されつつあるゲーム音楽との融合が、今年を代表する1枚。ただ昨年のケンドリック・ラマーのように、それを大衆と自己とを表現する金字塔にまで引き上げる事までは至らなかったのかもしれない。



25

APhoebe Bridgers - Stranger In The Alps (LP)


12月に知る。穏やかな女性SSWによる最初のアルバム。他にも評価されている女性SSWが登場したと思うが、個人的にしっくりしたのはPhoebe Bridgersだった。Spotifyで度々聴き、最近アナログ盤を入手した。



24

ADiários De Vento - Joana Queiroz (CD)


春頃ディスクユニオン新宿ラテン館にてCDを購入。ハンドメイドジャケットのため、12月現在入手困難。他にも南米の素晴らしい作品が今年は多数発売されたのに、私的に色々とあったために殆どCDを購入することができなかった。この作品はややアヴァンギャルドな作風となっているが、音色に無駄はなく、度々聴き返し、刺激を受けた。Spotifyでも聴くことができる。


23

A:Chip Tanaka - Django (CD)


MOTHER2が大好きで、特に95年発売なのに先進的な音作りの音楽に魅力された。サントラで戦闘曲を繋げてmixした曲がラストにあるんだけど、あのトラックをプレイリストにいれて、何度も聞いて鳥肌立ててた。音楽つくった田中さんの「MOTHERの音楽は鬼だった」って記事で僕はどれだけ自分自身の音楽感が広がったことか。ニコニコ動画にその音楽紹介の動画を頑張って編集してアップしたりした。
最近ゲーム音楽やチップチューンも海外から再評価かれてきて、数年前に渋谷で、そのゲーム音楽のクラブイベントがあって、最前列でみた。目の前に田中さんが来て、あの戦闘曲みたいなフィーリングを今のクラブサウンドでアップデートさせてプレイしてて、シビれたのを覚えてる。この日のトリはOPN(2年前にベスト1にした)だった。
万を期して、田中さんがChip Tanaka名義のアーティスト活動の集大成として、このアルバムがつくられたんだと思う。大好きなあの戦闘曲や、あの時みたDJの音がひとつのアルバムでまとめてくれただけで感謝。このアルバム曲をゲーム音楽としてプレイしてみたいなぁという欲もある。CDにて所有。


22

A:めぐる季節と散らし書き~子どもの音楽 - 高橋悠治 (CD)


夏頃にタワーレコード秋葉原にてCD棚の影にあったこの1枚を購入。タワーレコード渋谷にてインストアコンサートが行われた。個人的にはグールドのバッハを連想とするような淡々と無駄のない演奏から、度々聴き返した。作成したニューエイジ音楽ディスクガイドへの大きなブリッジ的な作品でもあった。実験的な曲も多い。秋頃に発売されたエリック・サティを再録音したアルバムが未だに入手していないのが悔しい。調べたら両作品ともに12月現在Spotifyで聴くことができる。(これを書きながらサティを聴いているのだけれど、最初のサティの録音とは全然異なった解釈の演奏でとてもエモーショナルかつノスタルジックで凄く良い・・)


21

AMike Oldfield - Return To Ommadawn (LP)


今年最初にはまったアーティストが、マイク・オールドフィールドだった。改めて、チューブラー・ベルズから順々にSpotifyで聴き、中古レコードを入手した。セカンド・アルバムである「Hergest Ridge」と、サード・アルバムである「Ommadawn」が特に良かった。プログレという範疇ではなくて、90年代初頭の日本の上質なケルト的なポップス・またはニューエイジの源流として、彼の作品があるように解釈すると、すんなりと音にしみることができた。そしてリアルタイム的にも、彼の最高傑作である「Ommadawn」の続編が発売されたのだ。Spotifyでは聴けず、アナログ盤を入手。時代の風化や変な現代的な迎合もなく、上質な1枚となっている。



20

A:バンコクナイツ: Bangkok Nites Original Soundtrack (CD)


映像制作集団空族による、サウダーヂに次ぐ新作「バンコクナイツ」が今年のはじめに上映され、舞台挨拶も行われた初回上映で鑑賞した。素晴らしい作品で、今年のベスト映画の2位とした。この映画に触発されてタイ音楽を聞きたいと思っていた中で、このサントラも発売されて、CDを購入して度々聴いた。NHKでタイ音楽をディグする番組が放送されたり、書籍「旅するタイ・イサーン音楽ディスク・ガイド TRIP TO ISAN」も発売された。このサントラは純粋なタイ音楽・イサーンのコンピレーションではなく、映画のためのサウンドトラックとして劇中のエレクトロダンス音楽や疑似60年代ロック等も収録されている(そのためAmazon評では否定的にかかれている)。映画撮影中に偶然録音されたというおばあさんの語りから歌になるトラックなんて、普通のコンピレーションには収録されていない。



19

B高田みどり - Through The Looking Glass (1983,LP Reissue 2017)


海外のレーベルによってリイシューが決まり話題となり、どんな音楽なのかとYouTubeで視聴をした。1983年の日本にこんな音楽があったなんてと、とても驚いた。ミニマル音楽とともに民族音響的なトラックもあり、一括りに解釈することなんてできない。そして自分の中の安直なジャンル分けをさせることを否定する力強い音。CDショップでも、レコード店でも、彼女の作品は特別な位置に配置された2017年だった。アナログ盤にて購入。「NEW AGE MUSIC DISC GUIDE」へも紹介した。



18

Bcero - 街の報せ EP (2016) (LP Release 2017)


前作「Obscure Ride」によって音楽的飛躍を果たしたceroの次の作品が今作。今年アナログ盤としても発売され、購入に苦労した1枚だった。表題曲だけでなく、「ロープウェー」「よきせぬ」ともに非常に高レベルの楽曲で、ただただ感嘆した。アナログ盤には「街の報せ」の黒田卓也によるReworkトラックも収録された。



17

BFrank Ocean - Blond (2016) (LP Reissue 2017)



昨年発売されて、大変に話題となった1枚だが、Spotifyだけで聴いていたために、そこまでじっくりとは聴いていなかった。限定で唐突に発売された今作のアナログ盤をiPhoneで注文し、半年後に到着した。レコード盤の音をデータに録音して、それをiPhoneにいれて、反復して聴いていった。妙に一致する風景は、がらんとしたビジネス街の高層ビル群。話題性がなくなってきて落ち着いてきて、そしてモノを仲介しないと、僕はそれをパーソナルな音楽として受け入れることができない。



16

ASampha - Process (LP)


以前からSamphaは気になるアーティストではあったが、今作でひとつの名盤を生み出すに至るとは思わなかった。Frank OceanBlondと同時期につくられていったと思う、内省的で静寂さもあるR&Bである。特に「Blood On Me」における間奏部分のピアノが本当に好きで、いつ聴いても鳥肌がたつ。ノヴェルゲーム会社のKeyの飛翔するニューエイジ的な表情を一瞬むける。その瞬間。たまらない。



15

AFabiano Do Nascimento - Tempo Dos Mestres (LP)


シンプルなギター作品である前作からより前進をし、往年のブラジリアン・ジャズの名盤に引けを取らない一作が2017年に生まれるとは思わなかった。Spotifyでも聴くことができるし、アナログ盤でも発売された。裾幅の広い、素晴らしいブラジル音楽。今年の優れたジャズ作品としては、現代ジャズとの交差をした「Kurt Rosenwinkel - Caipi」、40分以内にまとめ上げた「Kamasi Washington - Harmony of Difference」も素晴らしく両者ともアナログ盤で購入をしたが、個人的にその中でも特に秀でた1枚が、今作だった。



14

ARichard Dawson -  Peasant (LP)


12月に知った1枚。大好きなインディロックのアーティスト達が今年新譜を発表したのに、音が過剰となったように思って距離感があったのだが、Richard Dawsonを聴いてたまげた。大好きなニュートラル・ミルク・ホテルよりも更に原始的といえばよいのか、魂にくる。自分が音楽に求める強烈ななにかがここにはある。Spotifyで何度も聴き返しアナログ盤を買い求めた。とにかく大音量で「Ogre」を聴いて下さい。



13

A:公衆道徳(공중도덕) - 公衆道徳 (CD)


Lampのメンバーによって日本発売された謎の韓国インディアーティスト。経緯的にDaniel Kwonを連想する。言語なんてポルトガル語だろうが英語だろうがなんでもいいんだけど、もっとも尖って格好いいアコースティックなポップスで、iPhoneにこの作品は一年中入っていた。



12

Bスカート - CALL (2016) (LP)


アナログ盤でたまたま購入して、仕事でやばかった7月頃にヘビロテしていた。往年のスピッツ的なのか、とにかく心に迫った。夜中の横浜のビジネス街の歩道橋を思い出す。新作もはやくアナログ盤で出て欲しいな。



11

Aさよならポニーテール - 夢みる惑星 (CD)



年末の、昔勤めてたレコード店の忘年会の前に、ジャケットに惹かれて彼女らのEPを買って、なんか心に引っかかって、SpotifyYouTubeで過去の曲を聴いて、「ナタリー」のPVにやられて、今年最後の一週間はほとんどさよポニしか聴いてこなかった。特に聴いたのが「魔法のメロディ」とこの「夢みる惑星」。今作はイラストってペルソナをとっても、音は昔とは違うよとはならない、上質でからっとしたポップ・ロック。もっとアイドル的なものだろうと偏見をもっててこれまでちゃんと聴かなかった。最初のアルバムは空気公団、次のアルバムはキリンジとも通じるそれがあるのかもしれない。このアルバムのラストの(前作タイトルである)「円盤ゆ~とぴあ」も、ナタリーみたいな焦燥感がある曲で好きだ。



10

BToby Fox - Undertale Original Soundtrack (2016) (LP)


「MOTHER3」以来の衝撃的なRPG体験を「Undertale」ですることができたし、音楽も凄くいい。特に好きな曲が「Undertale」。今年公式日本語版も発売された。アナログ盤は元々事前に買ってて、ゲームをプレイし終わるまで寝かしていた。



9

B:空気公団 - Anthology vol.0 (1999-2004) (CD Reissue 2017)


元々友人が好きで、僕も「空気公団作品集」なんかをレンタルしてて、ちょっと荒井由実みたいでいいなとは思っていたのだけれど、それ以上に好きになることはなかった。改めてファンから選ばれた「ぼくらの空気公団」を聴き返していって、段々と彼らの音楽が好きになっていった。初期に興味をもっていたところ、今年初期音源のアルバム・EPなんかをまとめた本作が出ていたことを知った。空気公団をちゃんと知ることができてよかった。



8

BAndy Shauf - The Party (2016) (LP) 


少しづつ、少しづつ好きになっていった1枚。丁寧なインディロック。特に後述する2枚と一緒に、新しい生活へと向かう日々の中、Spotifyで何度も何度も聴いて、アナログ盤も買った。



7

AKommode - Analog Dance Music (LP)


Kings Of Convenienceのメンバーによる今作の気持ち良い1枚。Daft PunkRandom Access Memoriesをもっと洗練させてインディロックとして奏でた1枚といえばイメージしやすいかもしれない。



6

AJordan Rakei - Wallflower (LP)


Radiohead的ともいえるかもしれないし、Frank Ocean的ともいえるかもしれない、うまく説明ができない。これも少しづつ好きになっていった1枚。パーソナルな部分に響く。



5

AKendrick Lamar - DAMN. (LP)


これも今年とても話題になったヒップホップ作品。最初は前作「To Pimp~」に引きずられ、音色がつまらなくなったと、阿呆な自分は一度今作を一蹴した。しばらく経って、世間が落ち着いてきて、これまた少しづつ聴き返すようになって、厳ついようにみえるこの作品の「弱さ」に惹かれていった。思っていたよりずっと静寂でもあるとも思った。夜の川崎をこれを聞きながら走ったりした。弱っていた夏の終わりに金もないくせにこのレコードを渋谷HMVで買った。「FEEL.」という曲が大好きだ。



4

BKidkanevil - My Little Ghost (2014) (CD)


無理やりこのベストにいれてしまう。最初はYouTubeでこの作品を知った。ジャケットのイラストが凄く印象的だった。Spotifyで春頃から度々聴き返して、横浜のタワーレコードで新品を買った。本当はアナログ盤であればよいのに。下り側の田園都市線。いつもエレクトロニカを特別な1枚として置いてしまうが、今年は間違いなく、これを置きたい。とても日本的に感じる。なんでこれまで知らなかったんだろう。何度も聴いた。



3

Bキリンジ - ペイパー・ドライヴァーズ・ミュージック(1998) // ex  3 (2000)  (LP Reissue 2016)


今年はキリンジもまた、特別なバンドなのだと発見することができた1枚だった。これもベスト盤だけレンタルをしていたのだけど、Spotifyにアルバムが揃っていて、アナログ盤も高額ながらリイシューされて人気だと知って、友人の勧めもあって、どんなものかと聴いていった。順に聴いていき、特に1枚めと3枚目が秀でるように思った。横浜にいた頃は「3」を狂ったように聴き、観念してアナログ盤を買った(今はもう入手困難。買っておいてよかった)しばらく経って新しい生活が始まり、10月頃に病気が再発したかのように、またキリンジを熱烈に聴くようになって、今度は「ペイパー・ドライヴァーズ・ミュージック」を狂ったように聴いた。11月に鹿児島に一週間くらい出張していたのだけど、そこのホテルで毎日毎日このアルバムを聴いた(アナログ盤も買った)。インストゥルメンタル楽曲も非常に丁寧につくられていて、正直ブライアン・ウィルソンの精神性を根っこから受け継いでいるのが、彼らなのではないかとも思ってしまった。とても曲がいいのに、歌詞の練り方も素晴らしく、そのへんは「はっぴいえんど」からの正しきポップスの継承をしてるように思う。一曲選ぶとするなら、今だったら「雨を見くびるな」を。




B吉村弘 - Music For Nine Post Cards (1982) (CD,LP Reissue 2017)  // ex 静けさの本など


極端なことをいうと、吉村弘に出会っていなかったら、じぶんは今、生きていなかったのかもしれない。吉村弘、日向敏文、鈴木良雄なんかのアーティストを知っていき、再発見された音とかそういうことじゃなく、歌もビートもない、余白のある、その内面的な純粋な音に惹かれた。度々YouTubeで聴き返した。偶然吉村弘の三枚のCDMeditationsから売られてたのを買ったり、中古CDを探したりした。この音楽と、仕事でぼろぼろとなった自分は、色々な興味関心が失せていった。辛うじて聴くことができたのは、吉村弘のような音楽だった。深夜の、横浜市営地下鉄の中。
とてもパーソナルな部分に迫るノスタルジアなものだったり、ウィンダムヒルのようなリリカルなメロディとも繋がって、何か形にしたいと思って、「NEW AGE MUSIC DISC GUIDE」の構想を本格的に考えた。挫折もしたけど、つくりあげることができた。最後には尾島由郎さんの手に繋げることさえ出来た。追い詰められてたあの時の一線を、このアルバムを聴くと思い出す。

12月頃に本作はアナログ盤でも再販され、Spotifyでも配信された。



1

Bテニスコーツ - Music Exists Disc14 (LP/CD) // ex ときのうた (LP Release 2013)など


今年一番衝撃を受けた曲が、Music Exists Disc1に収録された、テニスコーツの「ラタンカ」だった。
歌詞を一部抜粋。

あおくにあげてると(みあげるとあおく)
そらのすきまから(そらはすきまから)
おもいでがもれて(おもいでがもれ)
ぼくはかさをさす
ことばをまいて
はへんをくんで
かずあるきずは
うたにきざめて
あお おお
からっぽになって(からっぽがあって)
いみがはがれて(いみだけがはがれ)
えだにのこってた(えだはのこしてた)
すきとおるかじつ
なまえけして
きまってない
ぼくはまだ
きまれない
そこへもどれ
もどれ
かぜがきずかぬくらい
とうめいになれ
きみとかじってる
ラタンのかじつ

アルバムを通して聴いて、この曲だけを何度か聴き返した、初めてテニスコーツを聴いた川崎高津区の風景。衝撃を受けて、まずMusic Exists Discシリーズのアナログ盤を求め、1と2をみつけて、後に3と4のCDを買った。(3も今年アナログ盤で発売された)。京都へ旅行にいったときに滋賀の東郷小学校へ赴いたのだけど、その長い田舎道でもテニスコーツを聴いてた。京都で「ときのうた」のアナログ盤もみつけた。友達と赴いた京都出町枡形商店街にある喫茶店のマスターが、元テニスコーツのメンバーだった。そんな驚きと楽しいきっかけもあった。

その後もずっとテニスコーツを聞き続けた。テニスコーツのプレイリストをつくった。Music Exists Disc1の「光輪」、Music Exists Disc2の「ときのうた」、Music Exists Disc3の「相違」なども。自分の状況が段々と落ち込んでいって、音楽なんて聞きたくないとも思ったけれども、前述した吉村弘などとともに、辛うじて聴けた音楽はテニスコーツだった。テニスコーツはおばかで愉快な曲もあれば、虚無的な曲もある。そんな曲もいいのが、淡々としたメロディと、張り上げることもないけど朗々とした「さや」の声。単純に、彼らの音楽に救われた。僕にとってとても特別なアーティストになった。

2度彼らのライブへ赴いた。初めてのそれは、秋葉原にある廃校で、彼らは靴も履かず、アンプもマイクも使わないで、飄々と現れたと思ったら、生声で歌いだして、歩きだして、自由に歌を奏でていった。そんなライブ、これまで観たことがなかった。でも一番しっくりとくる方法だとも思った。2度めはヴィンセント・ムーンや青葉市子と共に原宿のライブハウスで行われたライブ。ムーンの根源的な民族の宗教行事みたいな映像と挾んで謳った「光輪」や「嗚咽と歓喜の名乗り歌」もまた強烈だった。


終わり。



#2017年映画ベスト10

①沈黙 -サイレンス-
②バンコクナイツ
③夜は短し歩けよ乙女
④パターソン
⑤ムーンライト
⑥メッセージ
20センチュリーウーマン
⑧ラ・ラ・ランド
⑨ブレードランナー2049
SING/シング

特別
ユーリー・ノルシュテイン作品集

次点
KUBO/クボ 二本の弦の秘密
夜明け告げるルーのうた
T2トレインスポッティング
響け!ユーフォニアム2





後書き(今年の総括)

タイムラグ。ズレ。無理やり漢字一文字でかくとすると、齟齬の「齟」なのか。そんな一年だった。

感動したり、絶望的になったりする、その受けた時の感情、それを孤独な時にTwitterで極力タイムラグを生じさせる前に一部分をはきだす。でもそれは感情の一端に過ぎなくて、それが実は大きな存在なんだと自分の中でまとめてきた時に、もう最初の感情からのズレがあって、それを何かの形に・・ブログの文章だったり、友達に話をしたり、本として形にして発表・・するまでのタイムラグ、そしてそれが相手に伝わったり、広がったりしたりするまでにも、とてもタイムラグがある。そういう感情だけでなくて、お金もそうで、支出と収入は全然直線的じゃなくて、数ヶ月をまたいで自分自身を苦しめたり、また助けられたりするし、そのお金で良くも悪くも生きていく事ができて、お金がない時の苦しみは精神衛生的にも尋常じゃない。

アンプやスピーカーを買って、福井から来た友人と一緒にパスコアルの公演を観て2017年が始まった。プログラマーとしての仕事は客先常駐で、病院のシステムを組む仕事をした。祖父母が皆亡くなった。村上春樹の騎士団長殺しを読んだ。けものフレンズの放送が徐々に話題となった。テニスコーツを知った。連休に一人で乗合いで京都へ旅行し、友人と会った。日本の環境音楽が気になり始め、以前から構想していたニューエイジ音楽関係をまとめるディスクガイドを作る準備を始めた。連休明けから仕事の現場が変わりチャージシステムを組む仕事になった。夏になり、友人と四国旅行をした。

仕事が限界になった。ドラマ「やすらぎの郷」や、「けものフレンズ」、吉村弘などの環境音楽に辛うじて心動かされて、助けられたりもしたのだけれど、いよいよ何もかも興味を持つ気力も失せ、夜も眠れなくなった。夏に完成する筈だったディスクガイドも落とし、毎年行っていたお盆期のコミケの頃は一人寝込んでいた。休職(有休消化)し、何もできない抜け殻の日々が過ぎて行き、夏が終わった。職種を変え3年勤めた会社を辞めた。

秋になりレコードや本などの私物を一部処分した。仕事を探し始めた。生活費が尽きて両親からお金を借りた。エージェントサービスを仲介し都内の派遣型の外資系のシステム関係の会社に内定したが、両親ともめた末にそこを流し、地元の問屋の営業所に就いた。川崎から埼玉へ引越しをした。ディスクガイドの作成をもう一度やり始めた。新しい仕事と生活が始まった。苦労の末にディスクガイドが完成し、11月に東京で行われた文フリにサークル参加し、福井の友人が作り上げた短編集と並べ、頒布をした。仕事は遠征の出張も多かった。

今年の自己の内情については、その「NEW AGE MUSIC DISC GUIDE」の巻末にも長々と綴ってしまった。ただ、そのようなパーソナルなものを、音楽的解釈以外の部分から最終的にまとめ上げることができたのは、本当に良かったと思う。寄稿してくださった方々の支えや指摘なしには成し得なかった。同時に生活をある程度立て直すことができたのも、時々意見の相違があるものの、やっぱり支えてくれた両親に感謝したいし、厳しいことを言うけれども一番心配をしてくれた旧友にも、色々と相談にのってくれた友人達にも感謝をしたい。色んな人の支えがあって自分があるんだということを忘れないようにしたい。そして、自分自身が支えとなることを覚える2018年でありたいと思う。



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