月曜日, 12月 26, 2016

2016 Best Album by Colstrains






一年が過ぎ、また一年が過ぎていく中、
限られた給与を惜しみなく音楽に注ぎ込む日々。
気がつくと、「今年の年間ベストだと、
このアルバムはどのくらいの位置となるかなぁ」だなんて意識をしながら、
音楽を聴くようになってしまった。
しかし、同じ映画であっても、子供向けのアニメと、
難解なシネフィル受けのするような作品とがあるようなのと同じで、
音楽という媒体が同じというだけで、その中身は千差万別。
どういう基準をもって比較をすればいいのかと途方にくれる。
結局は、日常の中で、自分がどのくらいその音楽を繰り返し聴いたのかって
シンプルな基準に従えば、
ある程度順位をつけられるんじゃないかなと思い、
今年もまた年間ベストを書いたのだった。

今年は、
デヴィット・ボウイも、プリンスも、レナード・コーエンも、
富田先生も、ZABADAK吉良知彦さんも、
他にもたくさんのミュージシャンが亡くなってしまった。

今年は、CDが特殊ジャケット・紙ジャケットなどで販売するタイトルがあまり見かけなくなった。

(今年を象徴する宇多田ヒカルの新作も、ただのプラケースに帯をつけた一種類のみで、3000円フルプライスで販売されていた事だった。他にもシンゴジラのサントラやオーガユーアスホールもそうだったし、(前者は鷺巣詩郎のシン・エヴァンゲリオンシリーズのサウンドトラックは必ず紙ケースに入って発売されてたし、後者も特殊ジャケットで販売されることが多かった)特に印象的だったのが、サニーデイ・サービスの再発した「東京」と、新作の「DANCE TO YOU」、CDショップで仲良く並んでるこの2タイトルが、輸入盤よろしく帯すらついていないプラケースだった。)

音楽ストリーミングサービスも(結局音楽好きの中だけだが)
ようやく日本でも一般的なものになり、spotifyのサービスが始まった。
自分もこれまでは試聴機サービス程度にしか利用していなかったが、
自宅にWiFiをいれ、iPhoneも買い換えた事もあり、
気になった音楽を気軽に外へ持ち出せるようになって、
音楽を聴く選択肢を広げることができた。
(配送が延々遅れるアナログレコードが届く前に、
そのアルバムをiPhoneのspotifyで音源をダウンロードして聴いていた)

一時期、動画/テレビ番組「フリースタイルダンジョン」が流行り、
日本語ヒップホップが話題となった。
アメリカの大統領が、若い黒人のリーダーから老いた白人の不動産王になった。
また今年は、アニメーション作品に恵まれた一年だった。

今年は出会いと別れが多い一年だった。

昨年立て続きに祖父母の葬儀があり、
今年ももう片方の祖母の状態が良くない。
職場はずっと本社だったけれども、一時期辞める寸前まで追い込まれてしまった。
それでも外国人の後輩ができて、色々と話せる先輩もできて、
上司ともうまくやっていけそうなになった。
昨年組んだバンドも、何度もスタジオに入って練習をしたけれども、
結局やめてしまった。
婚活イベントで知り合い、趣味が合いそうだった年上の女の子とも
数度デートしたのだけれど、なかなかうまくいかなかった。
そんな自分もなんとか(27 CLUBで象徴的な)27歳を生き延びて28歳になった。
夏のコミックマーケットで、とあるコンピレーションアルバムに参加した。
初めて自分の音楽がCDにプレスされた。
妹は結婚し、ついさっき御懐妊したかもしれないという知らせも受けた。
周りの風景が気がつくと、
大きく変わってしまったなと思う一年だった。

今年みた映画のベスト


 * * * *

宣伝





 * * * *

まず、今年買った新譜のリイシュー作品、今年以外の新品作
(大体は買いそびれたり、発売が遅れた去年の作品)の紹介。

◎Reishue / New (Not 2016)




★RYO/szak/H.B STUDIO - 素晴らしき日々~不連続存在~ (2010) (CD)
★Sebastian Macchi-Claudio Bolzani-Fernando Silva - Luz De Agua (2005) (CD) / Luz De Agua : Otras Canciones (2015) (CD)
This Heat - This Heat (1979) (Vinyl) / Health And Efficiency (1981) (Vinyl) / Deceit (1981)  (Vinyl)
Isis Giraldo Poetry Project - Padre (2015) (CD)
Beto Guedes, Danilo Caymmi, Novelli e Toninho Horta - Beto Guedes, Danilo Caymmi, Novelli e Toninho Horta (1973) (Vinyl)
Gigi Masin - Wind (1984) (Vinyl)
芸能山城組 - 恐山 銅之剣 (1986) (Vinyl)
Helios - Yume (2015) (Vinyl)
Goldmund - Sometimes (2015) (Vinyl)
Kamasi Washington - The Epic (2015) (Vinyl)
David Bowie - Nothing Has Changed [Deluxe Edition] (2014) (CD) / ZEIT! 77-79 (CD)
★NUMBER GIRL - School Girl Distortional Addict (1999) (Vinyl) / SAPPUKEI (2000) (Vinyl) / NUM-HEAVYMETALLIC (2002) (Vinyl)
★FISHMANS - 空中キャンプ (1996) (Vinyl) / Long Season (1996) (Vinyl) / 宇宙 日本 世田谷 (1997) (Vinyl)
Pierre-Laurent Aimard - Bach: The Well-Tempered Clavier Book 1 (2014) (CD)
Alva Noto - Xerrox Vol.1 (2006) (Vinyl) / Xerrox Vol.2 (2009) (Vinyl)
(unoffical) - Pet Sounds: In The Key Of Dee (Vinyl)
★森は生きている - グッド・ナイト LP (2015) (Vinyl)
PIZZICATO ONE - わたくしの二十世紀 LP/EP (2015) (Vinyl)
田我流とカイザーソゼ - 田我流とカイザーソゼ (2015) (Vinyl)
★サニーデイ・サービス - 東京 (1996) (Vinyl)
★rei harakami - [lust] (2005) (Vinyl) / Red Curb (2001) (CD) 他
★Mariah - うたかたの日々 Utakata no Hibi (1983) (Vinyl) / 清水靖晃 - 案山子 (1982) (Vinyl)
★José Mauro - Obnoxius (1970) (Vinyl)
V.A. - Chords/bermei.inazawa collection (2011) (CD)
Carlos Niño & Friends - Aurorasmushroomtenderness (2015) (Vinyl)
Karin Krog / Steve Kuhn / Steve Swallow / Jon Christensen - We Could Be Flying (1975) (Vinyl)
高橋悠治 - サティ・ピアノ作品集 1,2,3 (1976他) (CD)
Telefon Tel Aviv - Fahrenheit Fair Enough (2001) (Vinyl)
Chassol - Big Sun (2015) (Vinyl)
★Dhafer Youssef - Birds Requiem (2013) (Vinyl)
Archy Marshall - A New Place 2 Drown (2015) (Vinyl)
Matana Roberts - Coin Coin Chapter Three: River Run Thee (2015) (Vinyl)
Keiichi Suzuki, Hirokazu Tanaka ‎– MOTHER 2 (Original Soundtrack) (1994) (Vinyl)
H. Takahashi - Sea Meditation (2015) (Tape)
Prince and The Revolution - Around the World in a Day (1985) (Vinyl) / Parade (1986) (Vinyl) / Parade (1986) (Vinyl)
Prince - Sign o' the Times (1987) (Vinyl)
Avalanches - Since I Left You (2000) (Vinyl)
Maroon 5 - Songs About Jane (2002) (Vinyl)
Beck - Odelay (1996) (Vinyl)


◎Old


★Pierre-Laurent Aimard - Bach: The Art Of Fugue (2007) (CD) 他
ASIAN KUNG-FU GENERATION - ファンクラブ (2006) (CD) 他
高橋アキ - 夢見る魚/高橋アキ・プレイズ・サティ (1979) (Vinyl)
Beto Guedes, Danilo Caymmi, Novelli e Toninho Horta - Beto Guedes, Danilo Caymmi, Novelli e Toninho Horta (1973) (Vinyl)
Milton Nascimento - Milagre Dos Peixes - Ao Vivo (1974) (Vinyl)他多数


FISHMANSの後期3タイトルや、
サニーディの「東京」がアナログ盤リイシューされたのは嬉しかった。
今年の頭は中古でアジカンを買い揃え、
ナンバーガールもアナログ盤でまとめて買い、
聴きそびれた日本語オルタナを少し追いかけた。

Luz De Aguaシリーズの2作品も美しかった。
rei harakamiの素晴らしさにようやく気がついた。
再販されたCDを買い揃え、何度も聴く。

Classicでは、ピエール ロラン・エマールの「フーガの技法」が素晴らしかった。
曲目がバッハではなかったけれど(メシアンだった)、
春のラ・フォル・ジュルネで偶然みることができてよかった。
また「素晴らしき日々」の影響で、サティも改めてよく聴いた。

清水靖晃の初期2作品もアナログで購入し、秋にはライブもみにいった。
旧譜の年間ベストは、José Mauro - Obnoxius 。
大好きなミルトン・ナシメントと通じる熱と憂いがあった。


 * * * *

2016年 年間ベスト。


40 - 31 (順不同)



Jeff Buckley - You And I (Vinyl)

James Blake  - The Colour In Anything (Vinyl)

VIDEOTAPEMUSIC - 世界各国の夜 (Vinyl)

Jakob Bro, Thomas Morgan & Joey Baron - Streams (Vinyl)

Andy Stott - Too Many Voices (VInyl)

王舟 - PICTURE (Vinyl) /  Mattia Coletti & Oh Shu - 6 SONGS (CD)

Bon Iver - 22, A Million (Vinyl)


Frank Ocean - Blonde (Vinyl)
話題だったFrank Oceanは、過去のブラックミュージックというより、今年ならばBon Iverと応じあうような、ジャンルや人種というより、現在のバラッドポップを総集する作品だった。(ブラックフライデー限定でLPも販売)

Gigi Masin - Hazkara (CD) / Tempelhof & Gigi Masin - Tsuki (Vinyl)
Gigi Masinは今年大躍進(新作三枚にリイシュー1枚に12インチカット1枚)、

American Football - American Football (2016)
「そして今年、新作がでて、それがあのアルバム同様セルフタイトルで、あの家と繋がったジャケットだった。それだけ覚悟をしてつくったのだなと心が引き締まった。」(https://note.mu/colstrains002/n/n6f6df22ef65f より再掲載 )




30


H Takahashi - Body Trip (Tape) 



Related work > YAKENOHARA REMIX (Data)
Bastian Void / H. Takahashi - 人間の機能を助ける音楽 (Tape) 
UNKNOWN ME - sunday void (Tape)  /  AWA EP (7”) / UNKNOWN SESSION vol.1 (CD) 

H Takahashi は、YAKENOHARA のミックスがきっかけで、本名と同じ名前の自分も、名前に固着せずに熱心に追うようになり、テープが出るたびに購入した。彼のテープがききたくて、テープデッキも購入をした。分かりやすくたとえるならば、rei harakamiのコアな電子音だけを取り出したかのような(ちょっと違うけど)、無駄のないとてもシンプルな電子音楽。


29


田中重雄宮司 - 弓神楽 (Vinyl)


日本の邦楽をそのまんま、歴史的音源としてレコードにした田中重雄宮司も、一種のミニマリズムとして完成されたものがあり、度々聞き返した。


28


威力 - 光速と弾煙 (CD)



威力のミックステープは、ジャケットが格好良く話題になっていたことがきっかけで購入。内容が突き詰めたコラージュテープ作品であり、音の渦に混沌とし、激しく揺さぶられた。


27


bermei.Inazawa - Worldlink Op.1 (CD) 



Related work > Campanella - Resonances (CD)

bermei.Inazawaが春のM3で発売した新作は旅をテーマとした作品で、先行して発売してたアルバム最後の曲が特に素晴らしかった。


26


Carlos Niño & Friends - Flutes, Echoes, It's All Happening! (Vinyl)



Carlos Niñoには驚かされた。New Ageの源流と、今のスピリチャルジャズの見事な融合作だった。


25


A Tribe Called Quest - We Got It From Here... Thank You 4 Your Service (Vinyl)



ATCQもまさか出るとは思わなかった新作で、往年の音だけでなく、いまのQティップらの音を垣間見れた良盤だった。


24


コトリンゴ - この世界の片隅に オリジナルサウンドトラック (CD)



本作にも収録されている、フォーククルセダーズのカバー「悲しくてやりきれない」は、コトリンゴのカバーアルバム「picnic album 1」に収録されたものを、再度アレンジしたものだ。最初のverで、「この世界の片隅に」パイロット版の音楽にも起用。このピアノ、ギター、ヴァイオリンと、とくとくと変化しながら、訴えかけるようなアレンジが好きだ。版権の都合で、このverが映画で使用されなったのは少し心残りだけど、他の曲に合わせた、小編成のオーケストラでのアレンジとして(劇中では序盤で使用されてる事もあり)、主張しすぎない立ち位置の曲となって収められている。

このアルバムは、ふと何か聴きたくなった時についつい聴いてしまう。同じ主線ばかりが続くようなサントラとは違って、インスト作品としても優れているし、遊び心のある日本語曲や、映画終盤で使用されたヴォーカル曲も素晴らしいのだが、アルバム作品として、映画に使用されなかった元気なビックバンド曲、その名も「New Day」が最後に収められていて、全く泣ける要素がないその展開に感極まりそうになるのだ。


23


Leonora Weissmann - Adentro Floresta Afora (CD)



Leonora Weissmannは、これまでの現代ブラジルにおける人脈の豊かさ故、豊潤な一枚が産まれた。


22


Kanye West - The Life of Pablo (unoffical Vinyl)



カニエの新譜にはさんざん振り回された。海外のTIDALのみで発表されたために、日本では聴くことも出来ず、結局某レコード店で入手した非公認盤のレコードでようやくちゃんと聴くことができた。その後日本の音楽サービス・ストリーミングでも配信が始まった。何曲かの曲のアレンジが変わっていた。


21


スピッツ - 醒めない (Vinyl)



スピッツは、ほどほどに思い入れがあるバンドだけれど、アルバム全てを買い揃えるとか、何度も聞いたりするといったバンドではなかった。中学時代に所属したフォークギター部で、最初に覚えて、未だにソラで弾ける唯一の曲が「チェリー」だったり、当時はじめて付き合っていた女の子が好きだったバンドだった。

近作には妙に引っかかる変なタイトルの曲名も多く、さらに言うと、アルバムのアナログ盤が(発売前の段階で)一般流通に流れたことで、買ってみようかなと思った次第。そして聞くと、初期の作品のような変な躍動感に、不要な音もないロックバンドだけの音で、しっかししたベースラインで、完成度が高いオルタナティブロックでポップなアルバムだった。それらの要素は、後述するミツメや坂本新太郎、そしてサニーデイサービスとも繋がっているものだった。


20


Gold Panda - Good Luck And Do Your Best (Vinyl) 


Related work > Kingdom (Data)

ゴールドパンダはネイティブなロンドンっ子の電子音楽家なのに、twitterでは時たま変な日本語でつぶやいたり(名前も金熊と日本語)、ちょっと変わっている。ローファイなネオダブステップな音響が新鮮だったファーストアルバムの頃から、ずっと追いかけている。そんな彼の三枚目のアルバムが、「日本」の風景が、ジャケットや曲名、そして音そのものにも現れている。

取り繕うような音作りを避けた、真摯なエレクトロニカ作品だと思った。その「ネガ」ともいえる作品が、その後Bandcanpで発表された「Kingdom」というEP作。LPを聞いたのならば、是非こちらのEPも聞いて欲しい。とある英国人が感じた日本の空気が、この2作に込められている。



19


青葉市子 - マホロボシヤ (Vinyl)



今まで青葉市子は、ちゃんと聞けば絶対に夢中になれるのだとわかっていたにも関わらず、結局ちゃんと向き合わなかったアーティストの一人だった。スピッツと同様、彼女の新作も、初のアナログ盤として一般に流通をしたので、つい購入してしまった。いままではピンクや緑など、色1色のジャケットで統一されてきたのだが、今作になってついに己の顔をジャケット写真とした。まるでジョニミッチェルのブルーのような貫禄である。恐るべき90年生まれのSSW。しかし音はこれまでの作品を踏襲し、基本的は弾き語りの作品だ。実験的なことにも流されず、ポップスの華やかさには目を向けず、芯のある普遍的な歌がつまった一枚。


18


Tigran Hamasyan, Arve Henriksen, Eivind Aarset, Jan Bang - Atmosphères (CD)



ECMより、2枚組みの大作である。強気のECMは日本のAppleMusicやらSpotifiには楽曲を提供せず、国内盤もでず、輸入版の本作もCDなのに新品4000円近くもするという高額な商品でもあるのだが、それだけこの作品に品格がある一端を、そのブランド力が担っているといえるのかもしれない。 Tigran Hamasyanは数年前に2010年代におけるコンテンポラリージャズの筆頭者として有名となったが、昨年と今年になって、ECMからもソロ作とは違う形でアルバムを製作している。その前作はアルベニアの宗教音楽という作品であり、これまでの躍動的でロックのようなアルバムとはまるで違う様に、あまり話題にもならなかったが、昨年の自分の年間ベストでもつい上のほうにおきたくなるように、つい聞きたくなってしまう音楽がそこにあった。今作では宗教音楽という枷が外れ、ECMらしい情緒ある室内楽のようなアンビエントなインプロ作品となっている。派手さはなく、全体的にマイナーな音調であるなか、唯一のメジャー調の「Hoy,Nazan」にはっとさせられてしまう。


17


Andre Mehmari & Antnio Loureiro - Mehmari Loureiro Duo (CD)



今年来日も果たしたブラジル最高峰のピアニスト、 Andre Mehmariと、自分が1stから追いかけ続け(昨年は来日公演もした) Antnio Loureiroが組んだ稀有な一作。日本のNRTからのCD販売のため、数あるスロリーミングサービスはもちろん聴けず、おそらく海外ではあまり聴かれていないと思われる、勿体無くも贅沢な音楽体験を、未だに高価なCDを熱心に買う日本人だからこそ、できているのかもしれない。

同じ水彩画のジャケットの「Andrés Beeuwsaert - Andrés Beeuwsaert」と共に、大切に手元へ置いておきたい。


16


Ben Watt - Fever Dream (Vinyl)



Gold Pandaと同じく、Ben Wattの今作のジャケットにも、日本の写真がコラージュされている。(よく見ると富士山とかがみえる) 最初期の耽美なアコースティックさを求めずとも、いまどき珍しいくらいの、シンプルな、メランコリックなロックアルバムである。つい何度も聴いてしまった。


15


坂本慎太郎 - できれば愛を (Vinyl)


今だからいうが、新作発表時にでたジャケット画に、がっかりしてしまった。CGのような派手な色の微生物?の、なんともいえないチープさに、坂本慎太郎はもうダメになったのではと誤解した(いつもどおりの単色のカセットテープのジャケットは格好良かった)が、実際にレコードを手にとって見ると、モニター越しにみたその画がちゃんと水彩で描かれ、とてもよいジャケットであったことが分かった。いうなればそんなアルバムだった。音は、前作にあった都会的なソウル感が後退し、より淡々と、しかし生バンドらしい音象になった作品だった。おかしな裏声のコーラスをはさみながら、あきらめたディストピアの細道をしゅくしゅくと歩くかのような、坂本の特色がこれまでより色濃くでてしまっていた。僕は終電で電車がとまってしまって、このアルバムを聴きながら引っ越してきてまるで土地鑑もない土地を、スマホの変な細道を案内するナビを片手に、しゅくしゅくと歩いていった記憶が残ってる。


14


The Avalanches - Wildflower (Vinyl)


今年の夏のイメージは、その頃よく聴いたBADBADNOTGOODや坂本慎太郎、VIDEOTAPEMUSICがたまたま合わさった世界観だったのかわからないけれど、どこか古ぼけた、ぼんやりと幻に見えるアーバンリゾートのようだった。

The Avalanches自体は、数年前に北陸に住む友人から1stを教えてもらって、巡る巡る桃源郷のような極限のミックステープみたいな楽曲に、こりゃ凄いなと関心した。1stアルバムはジャケットも格好良かったが、どうせならアナログ盤でほしいなと思って、CD購入は保留にしていた。だからアルバムを通して聴いたのは、実はこの(まさか出るとは思われなかった)2ndが初めてだったりする。巡る巡る桃源郷のような極限のミックステープだなという思いは、今作にも感じられたし、今作でようやく「The Avalanches 」を知ることができたと思う。また今年、1stも無事にアナログリイシューした。


13


Jamie Isaac - Couch Baby (Vinyl)


Related work > Loose Grip Mixtape (Data)

Jamie Isaacは、わかりやすく言えば1stの頃のJames Blakeフォロアーの一人ともいえて、その頃からすでに12インチが2枚出ているのだが、最初の一枚を聞いたときから僕は彼の虜になっていた。だが待てど暮らせどアルバムが発売されず、今年になってようやく発表した時には、革新的だったJames Blakeのネオダブステップにピアノをソウルフルに弾き語る音作りは、既に過去のものになりつつあった。正直今年出たJBの3rdは、丁寧な作品だったとは思うけれど、かつてあった楽曲の強みがあまり感じられなかった。

それでこのJamie Isaacはどうかというと、JBほどクラブ寄りの音ではなく、ややジャズの手法も取り入れて、基本はヴォーカルソングが主体の、10年代らしい丁寧なSSWな一枚になっている。地響きがするようなクラブで聴くよりかは、日常のなかで彼の音楽をすっと聴きながら、混み合う東京の町並みを歩くのが、なんとなくぴったしだった。もう数年、早く出してほしかった。


12


鷺巣詩郎 , 伊福部昭 - シン・ゴジラ音楽集 (CD)



兎に角、伊福部昭の「自衛隊マーチ」が大好きなのです。(映画「宇宙大戦争」のテーマソングというのはつゆ知らず、自分は原恵一監督作「クレヨンしんちゃん温泉わくわく大決戦」での使用が一番印象に残っている)。それがこのシンゴジラでは、終盤の最もアガるところでこの曲「宇宙大戦争」がモノラルでガツンと使われて、それは最高だった。それが頭から全く離れなくなり、タワーレコードに駆け込んで、フルプライスのこのサントラをむんずと掴み、購入してからは毎日のように聴いていた。


シンゴジラでの伊福部のアレンジ云々は、一度オリジナルに忠実に再現するように鷺巣がものすごく苦労をして仕上げたのにもかかわらず、庵野監督の鶴のひとこえでそれは未使用となり、結局オリジナル音源を劇中では使用するハメになったが、その再現工程がひとつの音楽研究として素晴らしく、その工程を緻密に描いた本作のライナーノーツは中々読ませられる。そしてその工程の楽曲をも収録したのが、このサウンドトラックであり、ゴジラシリーズの名曲を最もぶっとくて格好いい音が集められて、さらに鷺巣が新たに制作した楽曲も素晴らしく、一つの音楽作品として、必須の音盤といえるだろう。強いて言うなら、ボーナストラックはディスクを分けて収録してほしかった(鷺巣のサントラは、エヴァンゲリオンもそうだが、同じ主題を何度も聴くハメになるのだけが残念)


11


ミツメ - A Long Day (Vinyl)



ミツメは最初のEPの頃から、レコードが発売される度に必ず購入するバンドのひとつ。中期はやや味付けが濃い楽曲になってきて、ちょっと慢性的に彼らを追って、もう無理に買わんでもいいかなぁと思いつつ、今作も発売日に買いに行って、針を落としてみた。すると、その無駄な味付けが払拭され、とても気持ちよく、しかし次第に不安定なセカイへいつの間にか誘われているような、中毒性のあるアルバムになっているではないか。

日常のなかで、ついつい再生してしまうアルバムだった。


10


Radiohead - A Moon Shaped Pool (Vinyl)



「慌しい月曜日の朝、スピーカーにて一周。全編一本の映画のようで、最後の曲に涙。今通勤中にて二週目。 洋楽の原体験から今に至るまで十数年間、古今東西の音楽を知りながらもなお常に側に居続ける稀有な存在。正直今は他の音楽と比べて感想を書くような冷静な気持ちになれず…。ジョニーグリーンウッドの存在感大。音の無駄のなさ。」(再録:https://note.mu/colstrains002/n/n09049d3bb921
春頃実家に帰っていた時、突然新曲「Burn The Witch」が配信。iTunesから衝動的に購入。その後突然アルバム配信の発表。久し振りにiTunesよりアルバムを購入。その後、高価な「SPECIAL EDITION」もオフィシャルより発売(http://www.amoonshapedpool.com)されるとのことで、注文。(注文時に音源データも入手、iTunesのデータと重複…)今年購入した一番高価なアルバムになってしまったが、結成から何十年と経っているにも関わらず、モダンであり洗練された作品を作り続ける彼らは凄いと思う。象徴的な楽曲は、PTA監督がPVを手掛けた「Daydreaming」。

9


サニーデイ・サービス - DANCE TO YOU (Tape)



このバンドは、名前だけは知ってたし、数枚中古CDでアルバムも持っているけれど、これまで熱心に聴いたことは実はなかった。良いバンドだとは思っていたけれど、個人的には正直あまり引っかる部分がなかった。しかし「東京」は良いジャケットだなとずっと気になりつつ、Avalancheと同様、いつかレコードで手に入るだろうと思ってはや十数年、今年になってようやくリイシューが決まって、ようやくまともに聴いたのだった。

「東京」の楽曲が頭に残ったまま、付き合い始めた(当時の)彼女と出かけた渋谷の音楽フェスに、サニーデイも出ると知ってわくわくした。彼女は途中で帰ってしまって、結局ひとりでサニーデイを見に行った。懐メロを笑顔で奏でるんだろうなという想定を裏切られ、鬼気迫る演奏に圧倒されてしまった。そして、このアルバムの発売。あまり期待してなかったけど、せっかくだから買おうと思って公式サイトより「カセットテープ」を注文。そのややローファイの音をパソコンで録音して、iPhoneで何度も反芻。すると、かつて聴いていたサニーデイと、全然違う感じで、僕はこのアルバムにやられてしまった。製作途中も再解散になりかねないような緊張感のある、長期間の制作だったようで、とても熱量が詰まるアルバムになっていた。仕事をしていても、ずっとこのアルバムの曲が頭のなかに流れていた。近年、ロックバンドの印象がどんどんズームアウトしつつあるなと思う最中に、これまであまりピントがあっていなかった古株のバンドから、こんなフレッシュな名盤が出てくるとは思わなかった。「想定外」な出会いだった。これを機に、ちゃんと過去作を追っかけないといけんね。


8


Joana Queiroz, Rafael Martini, Bernardo Ramos - Gesto (CD)



この作品も、日本のレーベルによって産まれた、日本盤CD以外ではあまり聴く事が出来ない一枚。既に使われずきている気もする「21世紀のクルビダエスキーナ」のコピーを今作も背負っている。夏頃発売となった時から気になっていたのに、フルプライスのCDだったので、買うのに躊躇していた。冬に差し掛かり、いつの間にか店頭から姿を消した事に焦って、ようやく購入に踏み切ったのだった。金色のタイトルに特殊紙ケースに包まれた、みるのも美しいCDだった。

そしてそのジャケット絵を、ガロで有名な、日本の漫画家「逆柱いみり」が手がけている(もっと話題になるべきだと思う)。ラティーナの表紙もソロで飾った。その芳醇な世界観に応答する、豊かな作品。しかし、この作品は「ドラム」がない。そのため、とても風通しがいい。室内楽的な側面もあるし、ECM作品のようなフィーリングもある。購入が遅れてしまったけれど、今月この作品を聴かない日はない。


7


Max Graef & Glenn Astro - The Yard Work Simulator (Vinyl)



タワーレコードの視聴コーナーに当作があり、視聴して数秒、思わず立ち尽くす。一曲目だけのマジックかと思って曲を変えたが、どの曲も独特の浮遊感のある、そして無駄のないビート、全体の音作り。最高じゃないかと思って店内を探したらレコードもあって、そのまま衝動買い。

どこかの宣伝で「MoodymannやTheo Prrishを彷彿とさせるディープハウス」とかかれていた。アルバム発売された春頃にMax Graef & Glenn AstroがDJで来日すると知って、久し振りにオールナイトのクラブイベントへいった。(その時Moodymannも別の日程で来日するというニュースがあったが、自分はMax Graef & Glenn Astroに期待してそちらは諦めた)DJもアルバムに即するように、気持ちのいい繋ぎで、最前列で彼らの指先をむんずとみながらも、体は勝手に揺れていたのだった。


6


Mr. BEATS AKA DJ CELORY - J Dilla Mix Vol.1 (CD)



あの The Avalanches の新譜や、ATCQの新譜を抑えて、一般CD店では流通しないミックスCDを6位に据えてしまったが、それだけこのアルバムは素直に凄かった。本当によく聴いた。

きっかけは、妙に目につく赤黒レコードさんの宣伝だったのだけど、J Dilla の、あのDonutsを、元ネタと関連するディラの音源をMixする一枚だと紹介するもんだから、どんなものだと気になって購入。普段はミックスCDは全然買わない人間だったのだが、その認識を改めさせられたのが今作だった。「Donuts」自体がミックステープの様式のアルバムであるとともに、ヒップホップのビートを変革させた傑作であるが、断片的な楽曲が短く繋がれるつくりに、なかなかうまく消化できない作品だった。楽曲がバラけた7インチボックスなんかも発売されたが、実際「Donuts」を再構築したこの【J Dilla Mix Vol.1】によって、楽曲の繋ぎの意味合いを解いた、ひとつの「解決編」ともいえる作品が、今作だった。今年は、Mr. BEATS AKA DJ CELORYのこの著名なヒップホップミュージシャンをテーマにしたミックスが毎月発売されていって、ついつい発売される度に買って聴くようになってしまった。


5


BADBADNOTGOOD - IV (Vinyl)



BADBADNOTGOODも初期からずっと追いかけているアーティストだが、今作はこれまでのヒップホップジャズバンドという形態から脱皮して、簡単にジャンル分けできない、アルバムとして一つの世界観をもったものとなった。ビーチボーイズのペット・サウンズを思わすような不思議な楽曲から、緩やかに音の度は始まる。前述したアルバムにも度々書いた「アーバン感」が、今作にも満ち満ちている。

ジャズという有り様を、一度解体して独自のポップアルバムとして再度練り直して、モノトーンのクールさなんてクソ食らえと、どうだと言わんばかりのナメたようなジャケット写真とともに、僕の認識を改めさせられた、そんなアルバムだった。書きながら、そういうジャズの再解体という意味では、後述する「★」とも連なっているのかもしれないと思った。



4 - 1 (以下、4作品は、ほとんど順不同な、それぞれ特別な一枚。)



4


Dhafer Youssef -  Diwan of Beauty and Odd (Vinyl)


Dhafer Youssef を知ったのはつい最近なのだが、彼の前作と今作がアナログ盤で発売されるということと、彼の名前が信頼できるリスナーさんがオススメするネットの記事でみつけ、気になってspotifyからダウンロード。そして聴いて、久方ぶりに知らない音楽で、文字通り絶句した。

チュニジアのミュージシャンである彼の、魂を震わすような低音から高音になって叫ぶ歌声、現代ジャズとしてのグルーブ、そして唐突なロックビートが交わる曲もあれば、耽美でクールでスピリチュアルな音像。今年CDとしても発売されたイシス・ヒラルドを始めてきた時の、頭が追いつかなくて凄いという思いしかでない、あの感じのようだった。即座にレコードを探し、しばらくは彼以外の音楽を受け付けないほどだった。何故かあまり話題になっていないのがさっぱりわからない。必聴。


3


Aleem Khan - URBANA CHAMPAIGN (Tape)



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話題になっていないといえば、今作のほうがもっと言える。というのは、彼がレーベルから音盤を発売していなく、ホームページもなく、自分のBandcampからデータと、カセットテープ、それにストリーミングサービスでしか聴くことが出来ないからだろう。今年になってAppleMusicでよく音楽を掘っている友人が、このアーティストについて呟いていて、自分も気になって聴いてみた。彼がいったいどういう脈略からAleem Khanを発見したのかが謎だが、それで自分もこの作品に出会うことが出来たのは、本当に幸運だった。

ルーファス・ウェインライトのような作品といえば分かりいいのかもしれないが、よりソリッドで無駄がなく、自分は初めて聞いた時、ビーチボーイズのスマイルやポール・マッカートニーの初期作に、現代のチェンバー・ロック的なトランペットにジャズの自由さも合わさり、なんて作品があるのだと驚いた。情報を探しても全然見つからず(Bandcampのページを見つけるのも苦労した)、なんとかページをみつけ、そこで何と、限定100本のカセットテープがまだ購入できると知り即座に注文した。一ヶ月くらい経って無事テープは届いた。(端っこがちょっと割れていた)

当時はライブ音源や、少々完成度が低い前作のアルバムもBandcampにあがっていた。特にライブ音源は、全てスームレスに繋がった組曲となっていて、そこに魂を震わすトランペットがなり、自分はかなりお気に入りだった。もう消えてしまったのがもったいない。

今サイトを確認したら、まだテープが残っている。これだけの傑作がまだ見つけられていないのが不思議でしょうがない。必聴。



2


David Bowie - ★ (Blackstar) (Vinyl)


2位に据えてしまったが、今年を象徴するアルバムは有無を言わせず、この無名のアルバム「★」だ。

発売当時も、今度のボウイの新作はマークジュリアナなどの現代コンテンポラリージャズの音を、メジャーなロックアルバムの場に持ってきた革新的な作品になると風の噂を聞いていた。新しい音を貪欲に吸収するヒップホップよりも新しい、クラシックロックミュージシャンの作品だなんてあり得るんだろうかとやや懐疑的になりつつ、日本のオフィシャルレーベルがそこの直販限定で、クリアヴァイナル盤のレコードを発売するという情報を目にした際は、反射的に予約をしてしまった。

2016年1月8日に今作が発売され、耳の早い音楽好きは早々にデータで今作を聴いて話題になっていた。やや遅れて1月9日(土曜)にレコードも到着し、初めて聴いた時は、ゆったりとした重たい魔術的ともいえる楽曲が続いたように思って、しかもジャズを取り入れたといっていたのに、その(分かりやすい)要素がなくて、当惑しながらも関心したように思った。これはとても一度だけで咀嚼できる作品じゃないなと思いながら。

バンド仲間でもこの作品は話題になっていた。今年の初めは月に2度くらい定期的にスタジオに入って、3-4時間練習を重ねていった。2016年1月10日(日曜)も2016年最初のスタジオ練習の日で、昼頃から練習に励んでいた。多分3時か4時頃だったか、そろそろあと一回全体を通して弾こうと話していた時にちょっと時間ができて、何気なくツイッターを開いた。そこで最初に目にしたのが、デヴィッド・ボウイの訃報だった。にわかに現実として受け止められないという状態になり、僕は無言で、バンドメンバーに、iPhoneの画面を見せて回った。そのあとはもう、全く練習にならなかったのは言うまでもない。その日にバンドリーダーがふと「もう2016年も終わった」と、もらした。

そのあとは、半ば亡霊のようになった「★」を、来る日も来る日も飽きもせず何度も聴き続けた。僕は★の中毒者となっていた。仕事も、ずっと続けると思っていた現場から突然外され、周りの目がどこか冷ややかな本社に帰ってきて、気持ちも塞いでいた。そんな時にこの作品は日常に絡みつき、僕はそれにしがみついた。「★」が発売してからしばらく経ったある日、朝から大雪で、6時間くらい駅に入ることができなかったときも、ひたすらこのアルバムを聴き続けていた。

このアルバムを聴くと、いろんな感情が蘇る。歴代のデヴィッド・ボウイのアルバムで、今作が一番好きだ。


1


Jameszoo - Fool (Vinyl)


結局、今年一番聞いたアルバムは今作だった。「★」のような強い個人的な思いはないし、初めて聴いた時(きっかけはNinjatuneレーベル注目の新譜みたいな情報だったような)、ふにゃふにゃと変な電子音が続いて、途中ジャズの要素はあるものの、中盤は何だかよくわからないグチャグチャのアヴァンギャルドな展開で、聴き終えて、こりゃあ、とても聴いてらんないなぁと苦笑いをした記憶がある。その頃(というより今もそうだけど)あまりにも浪費癖が酷い(音楽だけで毎月家賃と同額程度、さらにそれに映像ソフトや本も買うから生活がギリギリの状態)ので、新しいレコードを買う時は、必ずストリーミングである場合は、まず3回通して聴いて、それでも良いと思ったものだけを買おうと心に決めたものだった(結局守れず)。それで、「Fool」も、事あるごとに再生をしたわけだが、回数を重ねるごとに、なぜが、このアルバムにどんどん魅了される自分がいた。

聴き始めた春の終わり頃、rei harakamiの再販CDをきっかけに、彼の音楽に夢中になっていた。そのせいもあってか、曲単体では挙げられないけれども、このアルバムの一部の要素に彼の丹精さを感じられたし、またエレクトロニカだけでなく生バンドも多く使用したInstrumental作品であるため、BADBADNOTGOODのような掴みどころのない、ジャズバンドによる非ジャズなポップスにも思えた部分もあれば、昨年年間ベストにあげた、OPNの「Garden of Delete」のようなテクノ、あとはフリージャズ、そういったものが混沌とつめこまれ、その後にまたその沼を抜けた展開もある。正直、このアルバムをどう言語化すればいいのか、よくわからない。

beatinkのページには次のように書かれている。

新曲「Flu」を公開した。本楽曲には、アルバム自体のインスピレーションにもなったというブラジル音楽界の巨匠、アルトゥール・ヴェロカイが参加。心地よいブラジリアン・フュージョンに眩いシンセ・ベースを合わせた楽曲の中で、職人気質なギター・プレイを披露している。 

〈Brainfeeder〉がカマシ・ワシントン、サンダーキャット、テイラー・マクファーリンに続いて、2016年満を持してジャズ・シーンに投下しようとしているのが、ジェイムスズーことミシェル・ファン・ディンサーのデビュー・アルバム『Fool』である。フライング・ロータス同様、ジャズをこよなく愛するプロデューサーであり、アヴァンギャルド・ジャズから、プログレ、クラウト・ロック、実験的エレクトロニック・ミュージックに至るまで幅広いバックグラウンドを持つ奇才の初作はアルバム自体のインスピレーションにもなったという大御所ジャズ・ピアニスト、スティーヴ・キューン(Steve Kuhn)、ギタリスト/作曲家/編曲家と多才なブラジル音楽界の大物アルトゥール・ヴェロカイ(Arthur Verocai)らが参加。脇を固めるミュージシャンも、サンダーキャットことスティーヴン・ブルーナー(Stephen Bruner)、ピアニストのニルス・ブロース(Niels Broos)、ドラマーのジュリアン・ザルトリウス(Julian Sartorius)とリチャード・スペイヴン(Richard Spaven)、ベーシストのラファエル・ヴォノーリ(Raphael Vanoli)、そしてサクソフォーン奏者のジョン・ダイクマン(John Dikeman)と実力派が顔を揃える意欲作となった。


正直、この文を読んでも、どんな音楽がなのかさっぱりわからない。ただ、エレクトロニックミュージシャンや新ジャズの面々だけでなく、ブラジルのアルトゥール・ヴェロカイが参加をしているというのは、ちょっとしたヒントになるのかもしれない。昨年発売したような気がするんだけど、今年公式でアルトゥール・ヴェロカイの1972年の1st「ARTHUR VEROCAI」がリイシューされた。今評価されているミナス的な音とも異なる、フリージャズのように不可思議な音作りをしているのに、なぜかオーガニックでフォーキーで、とてもまとまりのある一枚であり、72年の「ARTHUR VEROCAI 」の中の、ある種のDJ的な展開こそ、「Fool」を紹介するのにうってつけなのかなと思ったりもしたけど、やっぱり違うのかもしれない。

わかりやすく言えば、初期のSquarepusherみたいなジャズ作品といえばよいのかな。

そのヒントが知りたくて、先月渋谷のクラブイベントに来日するということで、会社でギリギリまでサービス残業をして、夜のクラブに飛び込んだ。深夜2時頃に登場じたJameszooのDJは、確かに他の現代ビートを繋げるDJとは異質の、変な古い民族ジャズみたいなレコードから、低重音ガンガンのダブステップから、予測不能な繋ぎをしていった。その日のメインだということで、フロアの人たちは喜んでいたけど、どう踊ればいいのか戸惑っていて、一番ノリノリだった中年サラリーマンは、最前列で謎の
波乗りダンスみたいをカマしていた。なんだか。

そうして2016年、冒頭で述べたような私事の出来事がどんどんと過ぎて、季節も夏に、秋に、冬になっていったけれど、飽きずに週に一回はこのアルバムを聴き続けていて、まったく不思議な事に、いつ聴いても、前回気が付かなかった展開に驚かされたり、新鮮に思ったりする。中盤のアヴァンギャルドだなと思った部分が、一番パンキッシュに思えるようになったり、自分の耳が変わったのか、このアルバムに染められたのか、よくわからない。一つ言えるのは、自己満足の不可解なアルバムなんかじゃ決してなく、しっかりと骨格を据えた、音の旅が味わうことができる作品だし、この作品こそ、来年以後の音楽の一つの指針になりえるんじゃないかと思ってる。



その他良かった作品(順不同)

Nicolas Jaar - Sirens (Vinyl)
Mammal Hands - Floa (Vinyl)
Steve Hauschildt - Strands (Vinyl)
The Caretaker - Everywhere at the end of time (Vinyl)
SHY LAYERS - S.T. (Vinyl)
Andrés Beeuwsaert - Andrés Beeuwsaert (CD)
クラムボン - モメント e.p. (CD)
Submerse - Awake (Vinyl)
agraph - the shader (CD)
OGRE YOU ASSHOLE - はじまりの感じ e.p.(CD) / 寝つけない EP (12”)
V.A. - たまゆら 主題歌コレクション ~卒業写真~ (CD)
Bob Dylan - Fallen Angels (Vinyl)
Quentin Sirjacq - Far Islands and Near Places (CD)
Ben Lukas Boysen - Spells (Vinyl)
Tim Hecker - Love Streams (Vinyl)
Steve Jansen - Tender Extinction (Vinyl)
Hidden Orchestra - Wingbeats (Vinyl)
FKA Twigs - M3LL155X (Vinyl)
GoGo Penguin - Man Made Object (Vinyl)
Julianna Barwick - Will (Vinyl)
ANOHNI - Hopelessness (Vinyl)
TOYOMU - 印象I : 黄色の踊り (Yellow Dancer Arrangements) (Data)
 TOYOMU - 印象II : プラグインソウル (Plug-in Soul Music) (Data)
 TOYOMU - 印象III : なんとなく、パブロ (Imagining "The Life of Pablo") (Data)
Helios - Remembrance (Data)
Mikael Lind - Intentions and Variations (Vinyl)
Jóhann Jóhannsson, with Hildur Guðnadóttir & Robert Aiki Aubrey Lowe - End of Summer (Vinyl)
天体 - voyage (CD)
Chance The Rapper - Coloring Book (Data)
戰車倶楽部 - メイクミラクル (CD)
Arca - Entrañas (Data)
Francis and the Lights - Farewell, Starlite! (Data)
Fragile Flowers - Asylum Piece (Data)
Boyish - S.S.L (7” & Data)
Healthy Dynamite Club - 爆誕EP (CD)
Noname - Telefone (Data)
Rihanna - ANTI (Data)
Sparkling Wide Pressure - PS084 - Sparkling Wide Pressure - Answerer (Tape)
Syrup16g - darc (Rental)
宇多田ヒカル - Fantôme (Rental)
墓場掘士 (田我流) - 墓場掘士 3 (CD)
L'eoscombu Couti - Five Cambridge Utilities (Tape)
Koji nakamura - FREEALBUM (Data)
Daniel Schmidt - In My Arms, Many Flowers (Vinyl)


こるすとれいんすの年間ベストアルバム 2010-2015



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