水曜日, 12月 23, 2015

こるすとれいんすの年間ベストアルバム 2015




2015年は、音楽にとってどんな年だったのだろう。一番大きな出来事といえば、丁度半年前に「AppleMusic」という、大規模な定額音楽ストリーミングサービスが開始され、続いてGooglePlayMusicやAmazonPrimeMusicといったストリーミングサービスが一気に開始された。

10年代になって諸外国ではSpotifyなどのストリーミングサービスが一般的になっているというニュースが入ってきてはいたものの、一体いつになったら日本でも開始されるのか、歯がゆく思いながら、当時大学生だった僕は、音楽流通とロングテール・フリー論をテーマとした卒業論文を書いたものだった。

今年ストリーミングサービスが始まって、最初はAppleのを使っていたが、初期の不具合からか、iTunesの(苦労して作ったり交換したりしている)プレイリストの中身を壊されてしまって以来、遅れて開始されたGoogleのものに鞍替えをし、今にいたっている。正直もの新しさから、音楽視聴の革命だなとわくわくしていたものの、半年使い続けた結果、巨大な音楽試聴機以上でも以下でもない、そんなサービスという感覚だ。結局、今年もアホみたいにレコードやCDを買いまくってしまったのだった・・。

2015年上半期ベストアルバム(Befour Apple Music)|こるすとれいんす|note

i am Kólßtrains: こるすとれいんすの年間ベストアルバム 2010-2014

前置きが長くなってしまったが、今年のベストアルバム、20枚+αをご紹介。(アーティスト名、アルバム名、購入媒体の順に記載。スマートフォンでの閲覧を考えて、余計な動画・視聴ページの埋め込みは控えた。)





20 Fabiano Do Nascimento - Dança Dos Tempos (Vinyl)


シンプルにガットギターを爪弾く、ファビアーノ・ド・ナシメントのデビュー・アルバム。レコードにはアイアート・モレイラの名がアーティスト名よりも大きなステッカーで貼られていた。アメリカからの発売作品だが、とても土着的なブラシリアンサウンドである。今年(廃盤のレコードを収集し)熱烈に聴いたミルトン・ナシメントとも繋がる1枚だと思った。

お薦め:4/Canto De Iemanjá




19 ツチヤニボンド - ツチヤニボンド 3 (CD)


10年代の日本では音楽的にとても豊かなインディバンドが数多く生まれたが、その中においても、彼らの前作「2」は物凄く尖って、(当時はあまり知らなかったが)南米的でもあって、まあ凄かった。そして満を持しての新作。一曲目「亀卜」から訳の分からない中華なサイケな音像曲から始まるものの、基本は生バンドの音が中心。彼らが主催した、ブラジルミナスをテーマにしたライブイベントにて購入。

お薦め:5/ぷかぷか 9/Esa Tristeza (Edurado Mateo)




18 Masayoshi Fujita - Apologues (Vinyl)


ポストクラシカルの名レーベルであるErased Tapesから発売。最初に知った際は、まさか日本人だとは思わなかった、ビブラフォンによる音響的な1枚。風景が音から広がり続けるような、そんな1枚だった。

お薦め:3/Swallow Flies High in the May Sky




17 ザ・なつやすみバンド - パラード (CD)


前作「TNB!」を買った2012年は、当時の仕事でぼろぼろになった気持ちにがっちりと彼らの音、歌がはまりこんでしまって、その年で一番大切な1枚となった。それから3年も待った、待望の1枚。周りの風景が大きく変わった今、もう一度彼らの音を聴けるのは、幸せだった。

お薦め:3/(春)はどこへいった? 7/かぜまちライン




16 Henning Schmiedt - walzer (CD)


今年の終わりでのピアノ・コンサート「THE PIANO ERA 2015」にて、初めて彼のピアノを生で聞くことが出来た。曲の最中で、不意に自分の幼少期からの記憶が走馬灯のように蘇ってきて、涙が止まらなくなってしまった。彼の作品は、元々音像的に加工した曲が多かったのだが、次第にストレートにシンプルに引いたピアノ演奏がそのまま収まるようになった。とてもリリカルで、感情的で、泣けてしまうかもしれない、今作もまたそんな素敵な1枚。80年代にWindham Hill Recordsを愛した方も、Keyやたまゆらといったアニメ作品が好きな貴方も。

お薦め:2/nowhere




15 Tuxedo - Tuxedo (Vinyl)


往年のディスコサウンドを蘇らせた作品といえば、Daft PunkのRandom Access Memoriesが記憶に新しいが、今年の春に不意に現れたこのアルバムも、その懐かしい・新しい向かい風に吹かれるように気持ちの良い1枚。インディロックから逆に僕はThe S.O.S. Bandなんかの音がすごく格好いいなって思ってアルバムを買ったりしたけれど、そんな風にこのアルバムによって時代を軽やかにまたいで、またいい音楽が聞くことが出来た。

お薦め:7/I Got U




14 ROTH BART BARON - ATOM (Vinyl)


秋に買って、何度も聴いた1枚。音はカナダで録音したインディロックで、あの段々と湧き上がるようなエモーションに満ち満ちている。そしてそんな音に、地に足の着いた歌詞に惹かれる。特に一曲目の〜をしたくないを繰り返す畳み掛け、何度もボリュームを上げて駆け出したくなった。

お薦め:1/Safe House




13 GABI - Sympathy (Vinyl)


例えるならば、Bjorkがよりシンフォニックになったアルバムとも言えなくもないのだけれど、しっかりと聞くとまるで違う。雪崩れ込むような音の刹那に何度も圧倒された。

お薦め:9/Hymn




12 Daniel Kwon - ノーツ (CD)


2010年に、ファーストアルバムであり、傑作セルフタイトルアルバム「Daniel Kwon」を出して以降、こんな天才はもうあっという間に世界を斡旋するんだろうなと思っていたら西荻窪で自分のスタイルで活動をされていた。2011年にCDR作品「Don't Look Now」、2013年に環境音を大量に入れ込んでしかも変名で発売した「Rくん」を日本で発売し、今作久しぶりに本名名義(発売時は日本語のダニエル・クオン)での新作。環境音とめくるめくポップスの音像劇はより完成度を上げて、これを聞きながら過ぎていく都市部の風景は、こっそりとふしぎな表情をしていた。

お薦め:5/mr. kimono




11 Tigran Hamasyan, Yerevan State Chamber Choir, Harutyun Topikyan - Luys I Luso (CD)


コンテンポラリー・ジャズな側面から近年話題になったティグランが、今作ではECMからアルメニアの宗教音楽を奏でる。多くのファンを獲得したと思う13年の「Shadow Theater」などのような躍動感とは違う形の、奥ゆかしさが込められている。ちょっと聞く限りではクラシックの声楽作品のようで退屈と思われるのかもしれないけれど、聴き進めると、その静寂さの均整と、合唱隊との圧倒的なセッションとも言えるような展開に高揚させられ、気が付くと毎日聞くようになっていた。

お薦め:10/Voghormea Indz Astvats



10 Will Butler - Policy (Vinyl)


Arcade Fireのリーダーの初ソロ作。新作が出ずに焦らされている自分は、公式からこのアルバムを5000円以上叩いてレコードを買ってしまった。個人的な、内省的ともいえるような展開と予想してたら大きく裏切られ、巨大になったArcade Fireのコンセプト作品では出来ないような、かき鳴らす単純な(でもひねくれた凝りもある)ロックンロールで突っ走る30分弱のアルバム。自分が見た限り、年間ベストに今作を入れている人が誰もいないのが勿体無い。

お薦め:4/Son Of God




09 cero - Obscure Ride (Vinyl)


夏に発売された時は、音楽好きの誰もが彼らのことを話題にしない時がなかった。前作、前々作がレコードリイシューしたから、新作もいつかレコードになってくれるだろうと信じて待って、先日ようやくレコードが発売されたのを予約して勇んで買った。聞くのが後一ヶ月早ければ、もっと上の順位にしたに違いない(したかった)、10年代の日本の代表的なレコード。ディアンジェロなどに見受けられるようなソウルフルな音のテイストが、これまでのCEROの市井な視点をより豊かに膨らます。

お薦め:4/Summer Soul 6/Orphans




08 Alva Noto - Xerrox Vol.3 (Vinyl)


ここまで、自分の内側を音で表現した作品は、中々見受けられない。胎内から、幼少の頃の夕焼けから、暗闇から、いまのぼやけた大人の世界にはない、果てしないセカイがあった。Drone・音響作ともいえる今作は、敢えて重層的なノベルゲーム好きにも薦めたいなと思う1枚。

お薦め:6/Xerrox Isola




07 Kendrick Lamar - To Pimp A Butterfly (Vinyl)


2015年を代表する1枚。

このアルバムをリストのどこに置くのかに頭を抱えて、結局ここにした。世間の評判ぬきに、自分もよく聞いたし魅了された。アナログ盤発売が遅れて、枯葉が落ちる頃にようやく針を落とした。格好いい。メッセージ性・アートワーク・音楽・全部ひっくるめてハイセンスで今日的で、アイコンとなったと思う。パリの同時テロが起きて、右も左も分からない新居で右往左往している最中、これを聞きながら必死に人混みのなかを歩いた秋だった。

お薦め:2/For Free? 7/For Sale?




06 Alabama Shakes - Sound & Color (Vinyl)


正直、あんな泥臭い(それが魅力な)アラバマ・シェイクスが、その汚れも身にまとったままでここまで洗練された1枚をつくるとは思わなかった。本当に格好いいロック作品。あんなにインディロックを買っていた数年前とは異なり、円安などのせいで全然ロックのレコードを買えなかった気持ちを吹き飛ばした。名盤。

お薦め:11/Gemini




05 D'Angelo And The Vanguard - Black Messiah (Vinyl)


「Voodoo」から早10年。昨年末に唐突にデータ配信によって発売されたためか、昨年のベストリストへ今作を入れた方も多かった。今年に入りCD、そしてアナログ盤が発売された。春はこのアルバムを毎日毎日延々とループし続けていた。今年はブラウンシュガーもアナログリイシューされ、なんと9月には来日公演までされて、音楽好きは一丸となって熱狂していた(ようにみえた)。前述のケンドリック・ラマーもそうなのだが、このアルバムも黒人音楽の歴史をしっかりと踏まえた上で、新しい音の揺らぎとエモーションを見せつけてくれた。ジャケットも格好良すぎる。

お薦め:1/Ain't That Easy 9/Betray My Heart




04 V.A. - ローリング☆ガールズ 主題歌集//ソング集//ソング集II (CD)


結局、今年一番自分を支えてくれた音楽はなんだったかなって考えたら、これら一連のアニメ「ローリング☆ガールズ」のCDだった。劇中で「ブルーハーツ」のカバーをやっている(埼玉所沢から始まる)ご当地アニメという宣伝が逆に萎えて、放送当時は見ていなかった。だけど、とある漫画家のフォロワーさんのツイートがきっかけて後追いをしてみたら、支離滅裂を怖れない脚本に見たことないような背景アートの中で、バイクとロックで突っ走る女の子達がいて、そこにブルーハーツにノッて最後まで突っ走った今作は最高のダークホースだった。夏のイベントにもいき、ソング集IIはそこの物販で購入した。
(カラオケ曲があったり、アレンジ違いなどが色々と重複しているため、これら3枚からプレイリストで組み直してよく聴いてた。「ソング集II」はジャケットが良いので・・)

新しい仕事の現場に振り回され、毎日神奈川から東京を横断し、埼玉に帰ってチャリに乗って、家につく頃には真夜中になる帰り道は、ローリングガールズの音楽を思いっきり聞く事くらいしかできなかった。今年もつらかった。だからこの作品や、ブルーハーツ(ラスト作を除く全アルバムをようやく聴いた。ライブ盤での月の爆撃機から1000のバイオリンの流れがもう。)を改めて大好きになったんだろうなと思う。いつまでも気が狂いそうだ!と肯定して欲しい。

お薦め:1-1/人にやさしく 他歌もの全部




03 Isis Giraldo Poetry Project - PADRE (Data)


高橋健太郎氏のツイートがきっかけで知ることができたアーティスト。Bandcampでのデータ販売でしか、音源を聞くことができない。

PADRE | Isis Giraldo Poetry Project

コンテンポラリー・ジャズ作品とは簡単に片付ける事ができない、膨よかな音作り、その感情の高鳴り、聴けば聴くほど、その深みに魅了される。前作も素晴らしかった。いつかレーベルの目に止まって、レコードが発売されたらいいな。

お薦め:7/Lagrimas y Auyidos




02 Sufjan Stevens - Carrie & Lowell (Vinyl)


春にレコードが届いてから、しばらく毎日のように聴いていた。スフィアン・スティーヴンスは、他のミュージシャンと相対的に評価できない。2008年の来日公演のニュースをきっかけに彼を知って(結局ライブには行っていない)、それ以降アルバムを追うにつれてどんどんと特別な存在になっていった。一時期アメリカの州全てのコンセプトアルバムをつくるなどと言っていたり、音楽もその自意識の膨らみが詰まって爆発寸前のところまでいっていて、更に前作の折にはどこかのインタビューでアルバム製作をやめたいなどと言っていたらしく、どうなるのか心配で堪らなかった。

だから今年の春に、ようやく、ようやく新作が出来た時にはそれだけで年間ベストにしても良かったくらいなのだけれど、音そのものも、膨張しがちだった近作とは真逆の、徹底的にシンプルにした構成、その中でも突き詰めた音響、そして自らの家族と、信仰と、過去と向き合った歌詞が相まって、素晴しい1枚になっていた。いつもは日本語歌詞が読みたくて国内日本版CDも平行して買っていたのだが、職場が変わったばかりでお金がなく、英語詞をiPhoneにもいれて、音を聞きながら時たま読んでいた。

夏につくった「郊外」をテーマとした同人誌、自分はその中にある自分の文章の最後に、今作とスフィアン・スティーヴンスを取り上げた。

お薦め:2/Should Have Known Better 9/John My Beloved




01 Oneohtrix Point Never - Garden of Delete (Vinyl)


この年間ベストを考えるにあたって、一番は、このアルバム以外には考えられなかった。

初めてレコードで聴いて、データを落としてiPhoneでも聴いて、正直このアルバムは駄作なんじゃないかと思った。執拗なストレスのある展開がよくわからなかった。しかしなぜだか、思わず聴いてしまうアルバムで、10月に新居に越してからはもう毎日、このアルバムを聴いていたと言っても過言じゃない。

昨年の渋谷が舞台となったRed Bullアカデミーの、ゲーム音楽をテーマとしたクラブイベントのトリが彼だった(最前列で見た)。その音源が、今年のRSDでの限定12インチ「Commissions II」に収録されたのだが、耽美で緻密で(だけど歪)なB面とは異なり、音だけきくと破綻しかけているA面は、思えば今作の雛形になっていたのかもしれない。

静と動の感情の起伏を、トラック毎の4分弱の楽曲として、それぞれの小宇宙をつくっている。今作ではボーカロイドのようなソフトウェアも使用され、それによるヴォーカル曲もある。初音ミクが登場した頃から、何でこれを「楽器」として使わうクリエイターが少ないんだろうと首を傾げていたのだけど、2015年の末になって、ようやくしっくりくるボーカロイドのヴォーカル曲が聴けた気がした。

うねるような展開が続く頂点が「Mutant Standard」なのだが、続けて今作でのアンビエントを担っている「Child of Rage」に繋がるが、それがもう最高なのだ。なれない都市部での仕事や生活の、妙なレントゲン写真のようなサウンドトラック、それが「Garden of Delete」だった。

お薦め:6/Mutant Standard 7/Child of Rage







次点

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V.A. - Tone \ bermei.inazawa collection (CD)
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未着
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(冒頭の写真は、引っ越し前の駅の、最後のプラットホームからの1枚)




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