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2月18日 火曜
5日間の衣服やタオル類、MacBook、ハードディスク、それに持参物として数枚のレコードと酒瓶や本を数冊。それらの荷物でパンパンに膨らんだリュック2つに大きな紙袋1つに手提げ袋も持って、ふらふらになりながら、数日間部屋を開ける為に引っ越し以来1番片付けた自分の家を出た。
ずっと前から準備をしていた今回の旅だったのに、深夜バスまでへの電車の乗り継ぎがまた時間ぎりぎりとなってしまった。晩飯も、途中の駅で慌てて買った梅のおにぎり二つだけだった。
東京駅下車。初めての深夜バス。数台の高速バスが止まっているバス乗り場の駐車場まで歩いていき、初めは見つからないんじゃないかと少し焦ったが、すんなりと目的のバスをみつけて乗車することが出来た。出発5分前。
3列乗車のバスにはそんなに乗客もいなくて、隣と後ろの席にも人はいなかった。仕切りのカーテンを閉め、座席を一番下まで下げて、iPhoneをつかって保存しておいた、麻枝准が酔いながら、友人と数時間に渡って昔のバンド時代や開発時のメールのやり取りを紹介していたラジオ音源を聴きながら道中を過ごす(聞くのは2度目)。真っ暗になるためにiPhoneをいじることはできないが、途中暇なので、行き先のMさんにLINEで現在位置を1時間毎に報告していた。
途中横浜のパーキングにとまったときに、(Kanonの真琴にちなんで)肉まんを購入。一応横浜中華街の名物ということで、肉汁滴り美味しかった。
夜3時頃の休憩を除き、4度ほどあったパーキングでの休憩では毎回降りてしまった。短期間寝ては起きての繰り返しで、あまり眠れたという気持ちにはならなかった。ラジオが終わり、今度はウォールフラワーの英語朗読音源を聞く。
22時30分 東京駅 発(King Krule - 6 Feet Beneath The Moon)
22時40分 東京都渋谷区神泉
23時00分 東京都世田谷区大蔵(麻枝准の殺伐ラジオ第二回)
23時20分 神奈川県川崎市宮前区 パーキング
0時00分 神奈川県足柄上部山北町
0時45分 静岡県富士市
1時00分 静岡県静岡市 パーキング (American Football EP, LP)
2時00分 静岡県掛川市
3時50分 岐阜県養老郡養老町 パーキング(The Perks of Being A Wallflower Audio Book)
4時30分 滋賀県長浜市
5時00分 福井県敦賀市(ミツメ - ささやき)
5時45分 福井県越前市(I’m Here OST)
6時00分 福井県鯖江市(星野源 - エピソード)
6時20分 福井駅 着
2月19日 水曜
朝5時頃になり福井入りをする辺りに完全に目が覚める。
朝6時20分頃に、福井駅に到着する。
事前に連絡をとっていたので、車でMさんが迎えに来てくれていた。
待望の福井での再会に喜び、まずはMさん家へ荷物を置きに行く。
Mさん家では最初に目についたいたる展での(Kanonの)あゆのポスターを筆頭に、
音楽CDや漫画などが色々と置いてあった。大きなテレビにオーディオもちゃんと設置されていた。
僕らはそこでガイドブックや観光マップなどを広げ、福井の名所を色々と教わりつつ、
今日どこへいこうかと相談した。
第一に目指す所を、小浜方面のAIRの舞台でも使われた「空印寺」まで進み、
そこからまた戻る途中で寄りたい所に寄り、レコード屋へ行き、帰ってこようと決めた。
車中に聞こうと数枚のCDを選ぶ。
朝8時頃に出発。朝食に松屋の納豆定食を。
そこからまた出発し、高速道路に乗る。1枚目はLiaのベスト盤Disc1。
お昼ごろに人魚伝説の像のある海岸沿いに到着。冬の日本海。2枚目はBermei.IzanawaのAIRアレンジCDなど。
寺が連なる一帯で駐車。車を降りて道中の寺を色々と散策しながらしばらく歩き、
洞窟の前にある人魚伝説の説明文にて、
「800年前に人魚の肉を食べた人が、いくら年を重ねても若い美貌のままでいた。
長寿である為に知識が豊富となり、各地へ趣き農作や建築の技術提供をし、
各地転々と旅をして数百年が立ち、最後の土地として現在の空印寺のほこらに入り、
人々に悪魔と罵られるAIRでの翼人伝説とは表裏があるものの、色々な共通点に気がつく。
各所を写真に収め、記念に二人でも写真を撮る。
空印寺を後にし、道中の(AIRにでてくる小道のようなところの)自動販売機で、
凍えそうなのに冷たい缶ジュースを。
続いて、国宝の明通寺へ。一時的にちらついていた雪が強くなる。13時頃。
入り口に若いお坊さんのガイドを聴きながら寺の境内へ入り、正座をして仏像や塔の由来や説明を受ける。
仏像は見事であり、質素な色合いながら美しい建築の寺や三重塔を色々と見られて非常に貴重な体験が出来たが、
15時頃車で、「中二病でも恋がしたい」というアニメの舞台の一つであった、東美浜駅へ赴く。
3枚目はArcade Fire - Reflector。
だがそこでもファンによるメッセージノートが置かれていたり、ポスターが貼ってあったりしてあった。
埼玉からきた自分も一言だけノートに。
30分ほど移動して、ヨーロッパ亭という昭和の雰囲気が漂うレストランに。
薄い衣のカツが3つ、キャベツもなくそのままご飯に乗ってあり、
そのうえにどろみのないソースがかかった丼。やはり、カツがジューシーで美味かった。
これは福井に来る度に食べなあかんなと思わせる逸品だった。
食後に車で海岸沿いを通って戻るルートを。4枚目はSADEのベスト盤。
遠くにフェリーが見え、だんだんと沈む太陽が海辺に映ったりと美しい風景だった。
またその海辺とSADEの音楽も相性が良かった。
(ベスト盤の割に知っている曲もなく、似たような曲が続いたような印象も・・)
18時半頃、福井唯一のレコード店らしい、フラメンゴレコードに到着。
2階建ての建物だが店舗は2階部分のみ。元々1階部分も経営してたが縮小のため・・
店舗は一部のジャンルに特化した店ではなく、
おおよそ80年代までのレコードがバランスよく価格も標準的におかれていたような印象だった。
店内ではソウルやジャズが流れていたような気がする。
ひと通り見て、キース・ジャレットの3枚組が1280円で売っていたのをみつけたけど国内盤だし他でも買えるだろうとスルーして、謎のギャング・オブ・フォーの12インチ280円と、新品のベル・アンド・セバスチャンのサウンドトラックのレコード合計2000円くらいで購入。
最後にスーパーに寄り惣菜や酒を買い、Mさん家に帰宅。
買ってきたMさんのレコード(歌謡曲や謎のアイドルLPなど)を聴きながら夕食。
その時に自分がMさんの誕生日が近かったということもあり持ってきたプレゼントも披露。
スフィアン・スティーヴンスのミシガン、THEO PARRISH'S BLACK JAZZ SIGNATURE
のレコード、
のレコード、
(Kanonの舞台で使われた)横浜元町のスーパーUNIONで購入した富士山麓ウイスキー
(本当は麻枝准氏のラジオにちなんで山崎が買いたかった)、雪うさぎ時に使った赤いビー玉、
MOTHER2ネスのフィギュア、文庫にバラける聖書、村上春樹訳ロング・グッドバイ文庫他。
持ってきたDVDからJohn Lennon Live 1969 のアバンギャルドな演出と、
おジャ魔女どれみドッカ~ン! 第40話「どれみと魔女をやめた魔女」を観た。
彼の最高傑作は未だにこの話と、デジモンアドベンチャーTVシリーズで唯一手がけた演出回の2本なんじゃないかと思っていたりするので東映は是非とも彼の演出回をまとめるべきである。
その日はウイスキーでベロベロになり就寝。
2月20日 木曜
9時頃起きた僕は、家主のMさんがまだ寝ていたので、シャワーを浴びて、
先日かった食パンをそのまま1枚チーズと一緒に水で食べて、
浅草ふくまる旅館という人情ドラマをなぜかみて(女将さんと昔恋をしていた男が地元の活性化のためにフリーペーパーをつくろうと企画したはいいものの、印刷所では話が通らずトンズラしようとしたところを捕まって、結局人情に負けてこれから頑張ろうみたいな話で、今どき珍しいようなドラマだった)
PS3でワンダと巨像をプレイして1人目の巨像を倒し2人目を途中まで取り掛かったものの段々と根性負けしてた時にMさんが起床。
仕事に出るMさんと一緒に家をでて、自分はぷらぷらと福井市を歩く。
Mさん家の近所は、道が完全に縦横均等に並んだ広い道で、店も駐車場をおいた大きな店が多く、
道を過ぎたらそこから先は何もないようなイメージの、完全な車社会の土地な感じだった。
遠くに薄っすらと山々が連なっているのが全く関東平野とは違ったイメージ。
ドン・キホーテまで歩いて(電車まで運んだ荷物が多くて苦労したので)荷物を運べるカートと、
洗剤類を購入(意外とお金をつかってしまった)。
帰宅して昼食にMさんのお母さんが作られたという惣菜と、即席ご飯と、カップ麺の昼食をとる。
その時に、「シベールの日曜日」という映画のDVDを観る。
記憶をなくした青年が、父親に捨てられて孤児院に入る少女と出会う。
やがて青年は少女の父親と偽って少女と週に一回、公園で会うようになる。
青年には記憶を失う前からの恋人もいて、彼女に少女の存在がばれないように、
青年は・・・
というようなロリータな恋物語だった。記憶をなくしたきっかけの事件、
記憶が無いからこその少年のようなピュアな行動も、冷静になればあれは少年の心をもった青年であったのに、
別の子どもを殴ったりあるものを盗んだりするような行為は、やはり異常なものにもみえてしまう。
そして少女を性的な目でみていないのに、外目からは何もわからない。
見終わった後にデッサンをした。それなりに目のところがよくかけた気がしたけど、
全体を見たらババ臭くなってしまった。
ヒロインの少女は確かに天使だった。
映画をみて、グレン・グールドのバッハのCDを延々流しながら、風呂掃除をした。
関係ないけど村上春樹が書くような単純労働の雪かきや草刈りは中々大切なことだと思う。
CLANNADや智代アフターの岡崎朋也が一人黙々とやった草刈りや整備作業も上記のオマージュなんだろうか。
気合を入れすぎたあまり一部塗装が剥がれてしまったのはご愛相である。
気がついたら20時になっていた。そろそろ帰宅するという連絡が。
夕食は鍋をつくった。
買ってきてくれた日本酒が美味かった。
途中でYさんというMさんの友人も来客。残念ながら車できたので乾杯できず。
それでもアニメや音楽の話題で大いに盛り上がった。
またウイスキーのためにベロベロとなる。
2月21日 金曜
この日はMさんの出社時間も早く、自分も早起きをして、シャワーを浴びる。
Mさんが出かけた後、朝食に昨日の残ったご飯と鍋を雑炊にして食べる。
その時に、小津監督の30年代の映画「一人息子」のDVDを観る。
貧乏な農村、それなりの成績を持つ小学生の息子が、母親に黙って進学をしたいと勝手に教師に伝えた。
その決心に先生は感心し、それを許した事を先生は母親に褒めたのだが、当の母は何も知らず。
一度は息子を叱るが、工場で労働している時に気持ちが変わって、
自分の生活はどうでもいいからお前は進学し、東京へ行き出世しなさいと泣きながら息子を許す。
時がたち、息子も東京で職に付き妻を持っていた。
息子に会いにきた母親は、息子と一緒に色々と観光を楽しんだが、
息子自身偉くなっているわけでなし、夜間学校の教師としてほそぼそと生活していたので、
やがて借りた金も尽きる。
「東京へ行った所で人が多く、誰もが出世できるわけじゃない」と弱音を吐く息子に、
全てを投げ捨て送り出した母親は・・・
という映画で、仕事を辞めて勉強をしようとしている自分と、それに非常に心配をしている両親の姿が重なり、
中々思うところができた映画だった。
晴れていたので洗濯をした。
午後は音楽をつくろうと色々機材を並べるもののうまくいかず頓挫。
CLANNADのブルーレイをみたりする。
帰宅したMさんは、カニなど、福井の名産を色々と買ってきてくれ豪華な夕食になった。
この日は「東京マグニチュード8.0」の総集編を鑑賞。
個人的に深夜アニメでは1番思い入れがある作品であったが、特別故に何度も見返す事ができなかった。
だから放送当時以来の鑑賞だったわけだが、中番のとある演出には総集編ながらはっとさせられ、
一人だったら間違いなく号泣していたが流石に堪えた。
ありのままのような親や兄弟に苛立つ女子中学生の描写はアニメではめったにないリアリズムだからこそ、
途中からの彼女の演技がたまらないものがある。
2月22日 土曜日
昼近くまで寝坊。起床してMさんがおいて行ってくれたカニの弁当を食べて、
昨日の残りを使ったお茶漬けをつくって頂く。
PS3の「風ノ旅ビト」をプレイする。
1周めでいきなり雪山からのステージに入ってしまったらしくあっという間にエンドロール。
2周めは最初ではないものの途中のステージから初められた。ベテランらしい白色のキャラクターに導かれてスカーフを長くしたり、明かりを灯すのも半分ずつやったり、見失ったらお互いまったり合図しあったりと、かなり気恥ずかしいコミュニケーションをとりながら最後まで辿り着く。
ポストクラシカル調の音楽がまた良い。文字が全く出ず(途中ジャンプを除き)シームレスに世界が続くのもいい。自然の脅威や尊厳や畏怖もあるのも「ファンタジア」を連想とさせるような神秘的なものだし、とにかく相手が愛しく思えてしまうのがやばい。
午後はカレーをつくろうと閉じこもりを脱してスーパーを探す。
買い物をして帰ってくるともうMさんが帰って来ていた(自分が鍵をもっていたので家に入れなかった)
日も暮れる前に前からいこうといっていた公園へいこうと、家に戻り買い物したものを置いて、
KanonやCLANNADでモチーフとして登場した大木を連想する公園の小さな広場へ。
かげりゆく夕日も相まって何だか神秘的に見えた。
そこから見下ろす町並みの景色もまた夕日で美しく染まっていた。
素敵だと言っていた図書館は早い閉館で残念ながら中はみられなかったが、
そのままMさんが子ども時代をすごした公園や遊具施設のあるところを散歩する。
幼児期のノスタルジアの共有はなかなか人とすることが出来ない中で、
そういったところをめぐることが出来て、こういう事は観光地では出来ないことで、
夕食はMさんが一時期通いつめていたコーヒー・イン・ハーフというお店のチキンカレーを食べた。
ひとくせありそうなマスターの出すカレーのスパイスは相当こだわってつくっているんだなと分かる味だった。
古いレコードが店内に閉まってあるそこの空気は中々あるものじゃない。
今度Mさんがまた埼玉にこられ時間ができたなら、北浦和のカレー屋さんに連れて行きたいなと思ったりした。
家に戻ってきたら、音楽のセッションをしようと機材を並べる。
途中でMさんへ仕事の電話がかかり、忙しく色々取り次いでいたので僕は彼の進めてくれた漫画を読む。
電話が終わり、初めはキーボードをシンセのように自分が遊び、彼はパッドでドラムを打ち、
数年前よくシンセソフトでAmbient曲をつくったようなことを、偶然にもGarageBandでこなせてしまった。
続いて、ちゃんとメロディのあるものをつくろうということで、
自分がエレキギターを爪弾き、彼のドラムに合わせてフレーズをつくってそのまま録音をした。
そして、それにキーボードでメロディを大雑把につけてみた。
セッションのメモのようなものだけれど、ギターとドラムが盛り上がる部分が偶然にも一致したりと、
中々面白い物ができたんじゃないかと思う。
もう一曲、彼がギターを、自分がドラムパットで一曲セッションをした。
曲作りをして、また二人で乾杯をした。
こんなに楽しいと思える時って早々ないんじゃないだろうか。
酔いが回り、気がついたら僕はソファーの後ろに回ってジャズのビートに合わせて踊っていた。
明日が遂に、最終日である。