土曜日, 4月 23, 2016
金曜日, 4月 22, 2016
水曜日, 4月 20, 2016
ジスモンチを観た。
ジスモンチを観た。
本当はナナ・ヴァスコンセロスとの共演だったはずが、先月唐突にヴァスコンセロスは天に召されてしまった。本公演も、急遽、ヴァスコンセロスの追悼の意を込めたものとなったという。
ジスモンチはやはり、Soloが好きで、度々レコードから録音をした音源を聴き返していた。土着的ともいえるブラジルの躍動感、クラシカルで静寂なピアノ、魔術のようなギターの調べ。その独特の音世界は唯一無二の存在だと思う。残念ながら、彼の作品は再販されている作品も比較的高価なため、彼の豊かなディスコグラフィを中々追えていない。
仕事を定時であげ、練馬へ向かう。会場は練馬文化センター。座席は二階の、ほぼ最後列に近い場所だった。
ジスモンチが現れる。万雷の拍手。深々とお辞儀をした後に彼は小さな音の、民族楽器を奏でる。観衆は耳を澄ます。鼻をすする音も響くような静けさ。続いてジスモンチはフルートのような笛を用いた演奏。そしてギター。CDで感じた不可思議な音が、あんなに小さなギターから響いてくる。不思議な音の波。仕事の疲れからか、度々瞼が落ちてしまった。ヴァスコンセロスとの共演作であり代表作のひとつである「Dança das Cabeças」の調べも幾つか奏でたように思った。演奏の狭間に英語で色々と解説をする。そうして時は流れ、第一部が終わる。
休憩を挟み、第二部。ジスモンチはピアノの前の、低い椅子に腰をかけ、小さなタオルをピアノに置き、音を奏で始める。海波のように、時に静かに、時に激しく、音楽が広がる。それでいて、メロディは不意に耳を掴むような、親しげなものであったりする。唐突に、数曲目の演奏で、涙が流れ、焦る。
ポップスやロックバンドのライブにあるような、エモーションやビートのない、クラシックのコンサートのようなジスモンチのステージは、十代の頃だったらあまり楽しめなかっただろう。色々と音楽と出会い、色々な世界を知って、それを楽しめるようになる事は、幸せな事だなと思った。ジスモンチも、恐らくこれが最初で最後のライブ体験であるだろうが、その伝説的なミュージシャンを、仕事帰りにそのまま東京で見る事ができるなんて、何て事だろう。ジスモンチは演奏を終え、またも謙虚に深々とお辞儀をしたが、こちらこそ彼に感謝を伝えたくて仕方がない。
一度ステージを去り、鳴り止まぬ拍手の中で再びステージに戻る。そのアンコール曲でスクリーンが降りてくる。曲の最中、普段着でにこやかに演奏をするヴァスコンセロスの生前の映像が流れる。ジスモンチはそれは自然に、静かに彼の演奏にピアノを合わせていく。最後の最後に、見られるはずだった二人のマジカルなステージが現れたのだ。演奏を終えたジスモンチに、観衆は立ち上がる。会場の明かりがついてもなお、拍手は鳴り止まなかった。
一度ステージを去り、鳴り止まぬ拍手の中で再びステージに戻る。そのアンコール曲でスクリーンが降りてくる。曲の最中、普段着でにこやかに演奏をするヴァスコンセロスの生前の映像が流れる。ジスモンチはそれは自然に、静かに彼の演奏にピアノを合わせていく。最後の最後に、見られるはずだった二人のマジカルなステージが現れたのだ。演奏を終えたジスモンチに、観衆は立ち上がる。会場の明かりがついてもなお、拍手は鳴り止まなかった。
2016年4月19日の日記
週末の暴風雨から、ここ数日、天気はあまりにもコロコロと移り変わる。あの大雨にやられた洗濯物も、まだベランダに干したままだ。これを書き終えた後、取り込んでたたもうと思う。
ぎりぎりに起床し(いつもどおり)、駅まで走り、先日買った「自省録」を満員の電車の中で読みながら、都心へ向かう。オフィスには、今日はいつも通りみんな出勤していた(集中して仕事に取り組めた)。昼食はいつもの居酒屋の日替わりランチ。20時まで勤務。
帰りにディスクユニオンへより、Mr.Beats a.k.a.DJ Celoryの新しいJ DillaのMixCDを購入し、まらジャズ館では先日のレコード・ストア・デイでのレコード、ジェイムズ・メイソンの未発表アルバム(妄想帯付き)を衝動買いしてしまう。偶然にもGogo PenguinのRSD限定ライブ盤もあった。
帰宅してLINEの画面をみて、シャワーを浴びる。twitterなどのアプリケーションの通知を切り、トップ画面を整理する。twitterはプロフィール画像も最初の(自作した水色の円のもの)に変更する。いつもの30%オフ弁当(今日はビビンバ丼)を食べる。Tim Heckerが4ADから出した新譜のレコードに針を落とす。外は爆音のエンジンと、けたたたましいサイレンでやかましかった。食後、Evernoteにて文章を書く。それをバンドメンバーへ個々にメッセージとして送り、一年程お世話になったバンドを脱退する。LINEも脱会する。またiPhone SEの予約もキャンセルをする。
ラジカセに先日購入したエマールのフーガのCDを入れ、それを流しながらこれを打つ。
月曜日, 4月 18, 2016
2016年4月18日の日記
缶コーヒーって、CMではスーツをきたサラリーマンが駅やオフィスでぐっと飲んでいるというビジュアルが多い気がするのだけれど、実際、僕にとっての缶コーヒーというのは、どうしても作業着と運送車の缶ホルダーと、汚れた地図と擦れたラジオを連想する。トラックやハイエースとかで運搬をしていた時に欠かさず飲んでいた気がするから。
健康診断からオフィスに帰ってきて、引き出しに入れっぱなしにしてあった缶コーヒーのピルを開けた時、ふと、そんな事を連想した。オフィスでコーヒーを飲んでいる人の多くは、コンビニで売られている淹れたてのコーヒーの紙コップを飲むか、もしくはブラックコーヒーのキャップ付きの缶コーヒーを飲んでいる印象がある。後者に関しては、単純に自分の上司がいつもそれを飲んでいるだけ、ではあるのだけれど。
朝、オフィスには人が全然いなかった。偶然が重なって、今日席にいる社員がほとんどいなかったからだ。今日から、新しい画面の製造にはいったのだが、ほとんど人がいない中では、中々仕事に集中することができなかった。つい、先日の問題の事をうじうじと考えてしまう。
昼休み、健康診断前なので昼食がとれない(朝ごはんも食べていない。本当は早起きをして松屋の朝食セットを食べたかったが寝坊していつもの電車となってしまった)。健康診断の実施場所へ向かう最中、駅に向かう途中にある書店で、新しい訳のプラトンの「饗宴」の文庫本を1000円で購入した。先日読み終えた、ウエルベックの「ある島の可能性」の劇中に登場をしていたので、気になっていたのだ。アマゾンのレビューによると、訳が新しいものは、すらすら読みやすくなっているとあったので気になっていた。
フランソワのドビュッシー(3枚目)を聞きながら、(診断受付まで時間があるので)新宿に下りてディスクユニオンのクラシック専門館に寄り道をして、バッハのフーガの譜面(購入するまでそれがフーガの譜面だとは思わなかった。まぁ300円だったのでそのまま購入した。ゴールドベルク変奏曲の譜面を欲しいのだが見当たらない。平均律グラヴィーアはやたらあるのはなぜだろう。)ピエール=ロラン・エマールによるフーガの技法のCDを購入した。
ピエール=ロラン・エマールは、とあるテクノミュージック専門サイトの音楽ライターが推薦されていたので気になっていた。先日ツタヤ渋谷にて100円レンタルがされていた日、大量にキースジャレットやらジスモンチやらチックコリアやら、あとカエターノヴェローゾのCDを借りた。名盤といわれていたものの、なぜだかまだ聞かずにいたアルバムも沢山あるので、どうせ100円なのだからと、その類のアルバムを借りまくったのだ。それでも、総額がレコード一枚と大差ない金額(3000円弱)なのだから参ってしまう。その中の一枚に、エマールによるフーガの技法を滑り込んでいた。
先日、ウエルベックや「千の顔を持つ英雄」の上下巻を読んでいたので、長らく放置をしていた、村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」の最終巻「鳥刺し男編」を読み返していた。テレビの奥の虚構と、十代の虚構と、都市の虚構と、半世紀前の戦場という虚構とが様々に入り組んだ、彼の作品の中でも少しややこしいながらも、独特なバランスの上に成り立つ(最高傑作といってもいい)名作であり、帰りの電車の中で終盤の展開を読んでいたときは、久方ぶりにページがとまらなくなって、帰り道にそのまま家に帰らず、駅前のケンタッキーへ入り、そのまま本に没頭をした。そのときに聞いていたのが、前述のエマールによるフーガの技法だった。淡々と迫るような、しかし圧倒するようなその演奏が、文章と相まって、中々強烈な体験をする事ができた。
話を今日のディスクユニオンに戻す。店内は、既に退職したと思われる年配の男性で、平日の正午なのにも関わらず賑わっていた。エマールのほかの作品があればよいなと思って探していたのだが、結局みつけたのは、フーガの技法だけだった。中古国内版で1400円位だったが、迷うことなくレジへいき、カードを出した。
健康診断は大久保で行われる。新宿から直接歩いて向かった。昼間の新宿歌舞伎町を抜けていったが、やはりあそこは日本の性産業の巣靴ともいうべき、異様な場所だった。大久保が近づくにつれ、看板の言語がだんだんと韓国語・中国語が増えていく。
受付開始の調度あたりの時間で到着。都内の多くのシステムエンジニア達が同じ診断服を着て、待合室で座っている。待っている間、ダコタクリストフの「昨日」の続きを読んでいた。しばらく前に、唐突にこの本が読みたくなり、文庫本を購入していたのだった。
診断自体は思った以上に良好な結果のようだった。体重が50キロ後半だったのが、50キロ前半へと落ち、視力も0.5から1.0とあがった。なぞである。
「昨日」にて、工場へ勤務する主人公の心情と、会社へ通勤する自分の心情とが重なる。しかし主人公には思い人がいるが、自分にはいない。自作の小説と、物語とが入り混じりながら話は展開していく。「かぐや姫の物語」にて、ともに飛翔をしつつも、結局はかぐや姫と共になれず、平凡な妻とともに日常へ戻る男の末路と、この小説の末路とが重なる。彼には創作の能力がなかったのか。愛を強く求め、身の回りを整えていたのだが、創作そのものに対して彼は命を売り渡さなかった。ダコタの文章は、簡潔ながら、唐突に強烈な「三行」にも満たない文章が突如たち現れて、その事実に圧倒される節がある。この小説もまた、その相当の展開があった。ダコタの自著伝である「文盲」を読まなくてはいけない。
検査は15時過ぎに終わる。空腹だったので、駅前にあった日高屋へ入り、野菜炒め定食を食べる。電車に乗り、会社に戻る。仕事は集中できず。帰りにまた書店へ寄らなくては。神谷美恵子訳、マルクス・アウレーリウス著、岩波文庫の「自省録」が読みたい。
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