土曜日, 8月 07, 2010

SRサイタマノラッパー×サイタマノラッパー2 感想

SRサイタマノラッパー


とにかく冒頭で、ルート17という曲の気恥ずかしい北埼玉的なキーワードの数々のラップソングを合唱しながら車で進むシーンという最高なつかみw、それに殆ど街灯のない道からみえるパチンコ屋とかの景色がもうね!

賑やかなオープニングがおわって普通のシーンになると、僕は低予算映画だから仕方ないとは思うけど、音の距離感のなさとか気になってしまった。のっぺりとしたアテレコみたいな感じ?ほかの場面ではその場で録音したような場面があるけど、そういうとこじゃ逆に声が遠すぎて周りの音と混ざり過ぎてると感じたり。しかし僕は、この映画を観続けることで、そんな些細な問題が忘れてしまうほど、この土田舎の情けない世界に飲み込まれていった。

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以下ネタバレ注意~



死期間近の偉大な先輩やら、ラッパーを宇宙人扱いする高校時代の女子とか、キャラがみな濃い!その女子が出演したAVを観てるときに母親が部屋にはいって来たゃったり。

この映画は、無茶苦茶長回しが多い。そして余分な描写も一切ない。最強なのがほぼBGMがないってこと。だからこそ、ヒップホップのビートが映えて、そして魂のぶつかり合いのような即興のラップが生きる。それが、名シーンと言われる「会議室」でのライブ。そしてラストの食堂での二人の、ビート音抜きの、声だけのフリーラップバトルのシーンに繋がる。

まずは「会議室」。現代の青年をみるみたいな名目で、役所が講演会みたいの開いて、そこに教育委員会やら市役所役員やらがずらりと役人顔で座っている。そこでライブすることになってしまった主人公たち。最初は躊躇していたけれども、だんだんビートに乗ってきて、政治問題や教育問題まで突っ込んだライムでラップをするように!しかしビートが終わり、そそくさと椅子に座る彼ら。そこに「質疑応答」が大人たちから行われる。

あれだけラップで反抗の思想を吐き出していたのに、「質疑応答」のなかでは何もまともな回答をすることもできない。

で、ラスト。主人公イックは個人経営の食堂のバイトに。その初日にイックのとともに「ショウグン」のメンバーだったトムが他の労働者グループと一緒に来店。たまらなくなったイックは公衆の面前で、はじめて自分の気持を赤裸々にしてラップをし始める。それにうつむいていたトムが返す。ビールをもってきたおばちゃんは棒立ち、労働者も固まってる中でトムは叫ぶ「もうヒップホップは諦めるしかないんだ」でもイックは・・・

そしてイックが振り返る。最高のラストカットだと思う。

ああ、埼玉をでてくあの女子に、イックがこれまでずっと着けていたヘッドフォンとCDウォークマンを、自分たちのラップが入ったCDと一緒に不器用に渡すあのシーンでぐっとこない男いないでしょ。

先輩の遺作のCDの行方は・・・?




SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー傷だらけのライム


行く前にちょっと立ち読みした。ロッキンオン最新刊。今朝、YouTubeで最高のライブを世界中継したアーケイドファイアのインタビュー。郊外をテーマに、過去への回顧録にする事なく、ありのままの今の思いや感覚を新しいレコードに刻まなくては、という気持ちで新作をつくったのだそうだ。

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川越スカラ座のSRサイタマノラッパー2最終上映にぎりぎり間に合った。

冒頭で(昨日始めて観たばかりだが)前作の主役の二人が出てきただけでなんだか懐かしく思ってしまう自分がいた。

この映画は群馬に舞台を変えて、そこで現地で必死に生きている20代後半の女子たち5人の「B-Hack」がメイン。

一歩間違えたら「ウォーターボーイ」みたいなありがちな青春ドラマ化しがちな「サイタマノラッパー」。しかしそうならない。

一作目の衝撃は、ただただ「ショウグン」というグループが成功するとかそういう単純な話じゃなく、挫折を最後まで突き通ししてしまったこと。その挫折の叫びで初めて「自分」がでたこと。

今作でもテーマは似ているかもしれない。ストーリーのあらすじはパスして、、、

前作ではショウグンのスタジオから荷物を詰めて出て行くシーンがあるが、今作ではラップに挫折した主人公アユムは、自分の証であった、そして挫折を経験して自分の鎖と錘と変わってしまった、ヒップホップのたくさんのCDを次々とゴミ袋に突っ込んで、羽根まくらで殴りまくって、そのゴミ袋ふたつをゴミ捨て場に。

その後のシーン!二つ置かれたゴミ袋。次のカットでは生ごみなどたくさんのゴミ袋が増えて、最初の二つは特別なものでも何でもなくなって、ただのゴミ袋になってしまった。次のカット、ゴミ収集車がくる。次のカット、もう車はでていって、ゴミ捨て場には何もなくなってしまった。

そのシーンが色々象徴的に描いていてドキッとしてしまった。ただだめだーとゴミに捨てるだけにとどまらない、ゴミのその後をしっかりと描き、生ごみと自分を形作っていた音楽のどっちか判別がつかないというシーンは自己のアイデンティティをどこにおくのか、音楽なんてただのゴミと同じだったのか、と。

「郊外」から抜けだしてやってきた「都会」。でもそこで夢はつかめず挫折するのが、よくアメリカンニューシネマの内容である。でもこの話は「郊外」で挫折したのに、「郊外」を肯定したのだ。

最後のラップは前作のそれと近いように揺さぶられるようなラップの投げ合いだった。ちょっと演劇的に感じられなくもなかった。それでもホンネのぶつかり合いは、それまで崩壊しかけてた主人公とその友達らとの関係のうえにあったべっとりしたものを、なぎ払った。

エンドスクロールでは映像が16ミリカメラみたいなものの長回しで、ただただ最良な締めだった。

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