水曜日, 12月 23, 2015

こるすとれいんすの年間ベストアルバム 2015




2015年は、音楽にとってどんな年だったのだろう。一番大きな出来事といえば、丁度半年前に「AppleMusic」という、大規模な定額音楽ストリーミングサービスが開始され、続いてGooglePlayMusicやAmazonPrimeMusicといったストリーミングサービスが一気に開始された。

10年代になって諸外国ではSpotifyなどのストリーミングサービスが一般的になっているというニュースが入ってきてはいたものの、一体いつになったら日本でも開始されるのか、歯がゆく思いながら、当時大学生だった僕は、音楽流通とロングテール・フリー論をテーマとした卒業論文を書いたものだった。

今年ストリーミングサービスが始まって、最初はAppleのを使っていたが、初期の不具合からか、iTunesの(苦労して作ったり交換したりしている)プレイリストの中身を壊されてしまって以来、遅れて開始されたGoogleのものに鞍替えをし、今にいたっている。正直もの新しさから、音楽視聴の革命だなとわくわくしていたものの、半年使い続けた結果、巨大な音楽試聴機以上でも以下でもない、そんなサービスという感覚だ。結局、今年もアホみたいにレコードやCDを買いまくってしまったのだった・・。

2015年上半期ベストアルバム(Befour Apple Music)|こるすとれいんす|note

i am Kólßtrains: こるすとれいんすの年間ベストアルバム 2010-2014

前置きが長くなってしまったが、今年のベストアルバム、20枚+αをご紹介。(アーティスト名、アルバム名、購入媒体の順に記載。スマートフォンでの閲覧を考えて、余計な動画・視聴ページの埋め込みは控えた。)





20 Fabiano Do Nascimento - Dança Dos Tempos (Vinyl)


シンプルにガットギターを爪弾く、ファビアーノ・ド・ナシメントのデビュー・アルバム。レコードにはアイアート・モレイラの名がアーティスト名よりも大きなステッカーで貼られていた。アメリカからの発売作品だが、とても土着的なブラシリアンサウンドである。今年(廃盤のレコードを収集し)熱烈に聴いたミルトン・ナシメントとも繋がる1枚だと思った。

お薦め:4/Canto De Iemanjá




19 ツチヤニボンド - ツチヤニボンド 3 (CD)


10年代の日本では音楽的にとても豊かなインディバンドが数多く生まれたが、その中においても、彼らの前作「2」は物凄く尖って、(当時はあまり知らなかったが)南米的でもあって、まあ凄かった。そして満を持しての新作。一曲目「亀卜」から訳の分からない中華なサイケな音像曲から始まるものの、基本は生バンドの音が中心。彼らが主催した、ブラジルミナスをテーマにしたライブイベントにて購入。

お薦め:5/ぷかぷか 9/Esa Tristeza (Edurado Mateo)




18 Masayoshi Fujita - Apologues (Vinyl)


ポストクラシカルの名レーベルであるErased Tapesから発売。最初に知った際は、まさか日本人だとは思わなかった、ビブラフォンによる音響的な1枚。風景が音から広がり続けるような、そんな1枚だった。

お薦め:3/Swallow Flies High in the May Sky




17 ザ・なつやすみバンド - パラード (CD)


前作「TNB!」を買った2012年は、当時の仕事でぼろぼろになった気持ちにがっちりと彼らの音、歌がはまりこんでしまって、その年で一番大切な1枚となった。それから3年も待った、待望の1枚。周りの風景が大きく変わった今、もう一度彼らの音を聴けるのは、幸せだった。

お薦め:3/(春)はどこへいった? 7/かぜまちライン




16 Henning Schmiedt - walzer (CD)


今年の終わりでのピアノ・コンサート「THE PIANO ERA 2015」にて、初めて彼のピアノを生で聞くことが出来た。曲の最中で、不意に自分の幼少期からの記憶が走馬灯のように蘇ってきて、涙が止まらなくなってしまった。彼の作品は、元々音像的に加工した曲が多かったのだが、次第にストレートにシンプルに引いたピアノ演奏がそのまま収まるようになった。とてもリリカルで、感情的で、泣けてしまうかもしれない、今作もまたそんな素敵な1枚。80年代にWindham Hill Recordsを愛した方も、Keyやたまゆらといったアニメ作品が好きな貴方も。

お薦め:2/nowhere




15 Tuxedo - Tuxedo (Vinyl)


往年のディスコサウンドを蘇らせた作品といえば、Daft PunkのRandom Access Memoriesが記憶に新しいが、今年の春に不意に現れたこのアルバムも、その懐かしい・新しい向かい風に吹かれるように気持ちの良い1枚。インディロックから逆に僕はThe S.O.S. Bandなんかの音がすごく格好いいなって思ってアルバムを買ったりしたけれど、そんな風にこのアルバムによって時代を軽やかにまたいで、またいい音楽が聞くことが出来た。

お薦め:7/I Got U




14 ROTH BART BARON - ATOM (Vinyl)


秋に買って、何度も聴いた1枚。音はカナダで録音したインディロックで、あの段々と湧き上がるようなエモーションに満ち満ちている。そしてそんな音に、地に足の着いた歌詞に惹かれる。特に一曲目の〜をしたくないを繰り返す畳み掛け、何度もボリュームを上げて駆け出したくなった。

お薦め:1/Safe House




13 GABI - Sympathy (Vinyl)


例えるならば、Bjorkがよりシンフォニックになったアルバムとも言えなくもないのだけれど、しっかりと聞くとまるで違う。雪崩れ込むような音の刹那に何度も圧倒された。

お薦め:9/Hymn




12 Daniel Kwon - ノーツ (CD)


2010年に、ファーストアルバムであり、傑作セルフタイトルアルバム「Daniel Kwon」を出して以降、こんな天才はもうあっという間に世界を斡旋するんだろうなと思っていたら西荻窪で自分のスタイルで活動をされていた。2011年にCDR作品「Don't Look Now」、2013年に環境音を大量に入れ込んでしかも変名で発売した「Rくん」を日本で発売し、今作久しぶりに本名名義(発売時は日本語のダニエル・クオン)での新作。環境音とめくるめくポップスの音像劇はより完成度を上げて、これを聞きながら過ぎていく都市部の風景は、こっそりとふしぎな表情をしていた。

お薦め:5/mr. kimono




11 Tigran Hamasyan, Yerevan State Chamber Choir, Harutyun Topikyan - Luys I Luso (CD)


コンテンポラリー・ジャズな側面から近年話題になったティグランが、今作ではECMからアルメニアの宗教音楽を奏でる。多くのファンを獲得したと思う13年の「Shadow Theater」などのような躍動感とは違う形の、奥ゆかしさが込められている。ちょっと聞く限りではクラシックの声楽作品のようで退屈と思われるのかもしれないけれど、聴き進めると、その静寂さの均整と、合唱隊との圧倒的なセッションとも言えるような展開に高揚させられ、気が付くと毎日聞くようになっていた。

お薦め:10/Voghormea Indz Astvats



10 Will Butler - Policy (Vinyl)


Arcade Fireのリーダーの初ソロ作。新作が出ずに焦らされている自分は、公式からこのアルバムを5000円以上叩いてレコードを買ってしまった。個人的な、内省的ともいえるような展開と予想してたら大きく裏切られ、巨大になったArcade Fireのコンセプト作品では出来ないような、かき鳴らす単純な(でもひねくれた凝りもある)ロックンロールで突っ走る30分弱のアルバム。自分が見た限り、年間ベストに今作を入れている人が誰もいないのが勿体無い。

お薦め:4/Son Of God




09 cero - Obscure Ride (Vinyl)


夏に発売された時は、音楽好きの誰もが彼らのことを話題にしない時がなかった。前作、前々作がレコードリイシューしたから、新作もいつかレコードになってくれるだろうと信じて待って、先日ようやくレコードが発売されたのを予約して勇んで買った。聞くのが後一ヶ月早ければ、もっと上の順位にしたに違いない(したかった)、10年代の日本の代表的なレコード。ディアンジェロなどに見受けられるようなソウルフルな音のテイストが、これまでのCEROの市井な視点をより豊かに膨らます。

お薦め:4/Summer Soul 6/Orphans




08 Alva Noto - Xerrox Vol.3 (Vinyl)


ここまで、自分の内側を音で表現した作品は、中々見受けられない。胎内から、幼少の頃の夕焼けから、暗闇から、いまのぼやけた大人の世界にはない、果てしないセカイがあった。Drone・音響作ともいえる今作は、敢えて重層的なノベルゲーム好きにも薦めたいなと思う1枚。

お薦め:6/Xerrox Isola




07 Kendrick Lamar - To Pimp A Butterfly (Vinyl)


2015年を代表する1枚。

このアルバムをリストのどこに置くのかに頭を抱えて、結局ここにした。世間の評判ぬきに、自分もよく聞いたし魅了された。アナログ盤発売が遅れて、枯葉が落ちる頃にようやく針を落とした。格好いい。メッセージ性・アートワーク・音楽・全部ひっくるめてハイセンスで今日的で、アイコンとなったと思う。パリの同時テロが起きて、右も左も分からない新居で右往左往している最中、これを聞きながら必死に人混みのなかを歩いた秋だった。

お薦め:2/For Free? 7/For Sale?




06 Alabama Shakes - Sound & Color (Vinyl)


正直、あんな泥臭い(それが魅力な)アラバマ・シェイクスが、その汚れも身にまとったままでここまで洗練された1枚をつくるとは思わなかった。本当に格好いいロック作品。あんなにインディロックを買っていた数年前とは異なり、円安などのせいで全然ロックのレコードを買えなかった気持ちを吹き飛ばした。名盤。

お薦め:11/Gemini




05 D'Angelo And The Vanguard - Black Messiah (Vinyl)


「Voodoo」から早10年。昨年末に唐突にデータ配信によって発売されたためか、昨年のベストリストへ今作を入れた方も多かった。今年に入りCD、そしてアナログ盤が発売された。春はこのアルバムを毎日毎日延々とループし続けていた。今年はブラウンシュガーもアナログリイシューされ、なんと9月には来日公演までされて、音楽好きは一丸となって熱狂していた(ようにみえた)。前述のケンドリック・ラマーもそうなのだが、このアルバムも黒人音楽の歴史をしっかりと踏まえた上で、新しい音の揺らぎとエモーションを見せつけてくれた。ジャケットも格好良すぎる。

お薦め:1/Ain't That Easy 9/Betray My Heart




04 V.A. - ローリング☆ガールズ 主題歌集//ソング集//ソング集II (CD)


結局、今年一番自分を支えてくれた音楽はなんだったかなって考えたら、これら一連のアニメ「ローリング☆ガールズ」のCDだった。劇中で「ブルーハーツ」のカバーをやっている(埼玉所沢から始まる)ご当地アニメという宣伝が逆に萎えて、放送当時は見ていなかった。だけど、とある漫画家のフォロワーさんのツイートがきっかけて後追いをしてみたら、支離滅裂を怖れない脚本に見たことないような背景アートの中で、バイクとロックで突っ走る女の子達がいて、そこにブルーハーツにノッて最後まで突っ走った今作は最高のダークホースだった。夏のイベントにもいき、ソング集IIはそこの物販で購入した。
(カラオケ曲があったり、アレンジ違いなどが色々と重複しているため、これら3枚からプレイリストで組み直してよく聴いてた。「ソング集II」はジャケットが良いので・・)

新しい仕事の現場に振り回され、毎日神奈川から東京を横断し、埼玉に帰ってチャリに乗って、家につく頃には真夜中になる帰り道は、ローリングガールズの音楽を思いっきり聞く事くらいしかできなかった。今年もつらかった。だからこの作品や、ブルーハーツ(ラスト作を除く全アルバムをようやく聴いた。ライブ盤での月の爆撃機から1000のバイオリンの流れがもう。)を改めて大好きになったんだろうなと思う。いつまでも気が狂いそうだ!と肯定して欲しい。

お薦め:1-1/人にやさしく 他歌もの全部




03 Isis Giraldo Poetry Project - PADRE (Data)


高橋健太郎氏のツイートがきっかけで知ることができたアーティスト。Bandcampでのデータ販売でしか、音源を聞くことができない。

PADRE | Isis Giraldo Poetry Project

コンテンポラリー・ジャズ作品とは簡単に片付ける事ができない、膨よかな音作り、その感情の高鳴り、聴けば聴くほど、その深みに魅了される。前作も素晴らしかった。いつかレーベルの目に止まって、レコードが発売されたらいいな。

お薦め:7/Lagrimas y Auyidos




02 Sufjan Stevens - Carrie & Lowell (Vinyl)


春にレコードが届いてから、しばらく毎日のように聴いていた。スフィアン・スティーヴンスは、他のミュージシャンと相対的に評価できない。2008年の来日公演のニュースをきっかけに彼を知って(結局ライブには行っていない)、それ以降アルバムを追うにつれてどんどんと特別な存在になっていった。一時期アメリカの州全てのコンセプトアルバムをつくるなどと言っていたり、音楽もその自意識の膨らみが詰まって爆発寸前のところまでいっていて、更に前作の折にはどこかのインタビューでアルバム製作をやめたいなどと言っていたらしく、どうなるのか心配で堪らなかった。

だから今年の春に、ようやく、ようやく新作が出来た時にはそれだけで年間ベストにしても良かったくらいなのだけれど、音そのものも、膨張しがちだった近作とは真逆の、徹底的にシンプルにした構成、その中でも突き詰めた音響、そして自らの家族と、信仰と、過去と向き合った歌詞が相まって、素晴しい1枚になっていた。いつもは日本語歌詞が読みたくて国内日本版CDも平行して買っていたのだが、職場が変わったばかりでお金がなく、英語詞をiPhoneにもいれて、音を聞きながら時たま読んでいた。

夏につくった「郊外」をテーマとした同人誌、自分はその中にある自分の文章の最後に、今作とスフィアン・スティーヴンスを取り上げた。

お薦め:2/Should Have Known Better 9/John My Beloved




01 Oneohtrix Point Never - Garden of Delete (Vinyl)


この年間ベストを考えるにあたって、一番は、このアルバム以外には考えられなかった。

初めてレコードで聴いて、データを落としてiPhoneでも聴いて、正直このアルバムは駄作なんじゃないかと思った。執拗なストレスのある展開がよくわからなかった。しかしなぜだか、思わず聴いてしまうアルバムで、10月に新居に越してからはもう毎日、このアルバムを聴いていたと言っても過言じゃない。

昨年の渋谷が舞台となったRed Bullアカデミーの、ゲーム音楽をテーマとしたクラブイベントのトリが彼だった(最前列で見た)。その音源が、今年のRSDでの限定12インチ「Commissions II」に収録されたのだが、耽美で緻密で(だけど歪)なB面とは異なり、音だけきくと破綻しかけているA面は、思えば今作の雛形になっていたのかもしれない。

静と動の感情の起伏を、トラック毎の4分弱の楽曲として、それぞれの小宇宙をつくっている。今作ではボーカロイドのようなソフトウェアも使用され、それによるヴォーカル曲もある。初音ミクが登場した頃から、何でこれを「楽器」として使わうクリエイターが少ないんだろうと首を傾げていたのだけど、2015年の末になって、ようやくしっくりくるボーカロイドのヴォーカル曲が聴けた気がした。

うねるような展開が続く頂点が「Mutant Standard」なのだが、続けて今作でのアンビエントを担っている「Child of Rage」に繋がるが、それがもう最高なのだ。なれない都市部での仕事や生活の、妙なレントゲン写真のようなサウンドトラック、それが「Garden of Delete」だった。

お薦め:6/Mutant Standard 7/Child of Rage







次点

Floating Points - Elaenia (Vinyl)
Jakob Bro / Gefion // Hymnotic / Salmodisk (Vinyl/Data)
V.A. - Tone \ bermei.inazawa collection (CD)
Antonio Sanchez - Birdman Original Soundtrack (Vinyl)
Matthew Halsall & The Gondwana Orchestra - Into Forever (Vinyl)
St Germain - St Germain (Vinyl)
SAKEROCK - SAYONARA (Vinyl)
Brian Wilson - No Pier Pressure (Vinyl)
Chassol / Big Sun (Vinyl)
Gigi Masin ‎– Talk To The Sea (Vinyl)

Vashti Bunyan - Heartleap (Vinyl)
The Dodos - Individ (Vinyl)
Wilco - Star Wars (Data)
クラムボン - trilogy (Vinyl)
Chilly Gonzales - Chambers (Vinyl)
Nicolas Jaar - Nymphs II // Nymphs III (Vinyl)
Ólafur Arnalds & Alice Sara Ott - The Chopin Project (Vinyl)
Nicolas Jaar - Pomegranates (Data)
Oneohtrix Point Never - Commissions II (Vinyl)
Archy Marshall / A New Place 2 Drown (Stream)

Ilumiara - Ilumiara (Data)
Adjamån - Smaller Things (Data)
Donnie Trumpet & The Social Experiment - Surf (Data)
Gustavito e a Bicicleta - Quilombo Oriental (Data)
José González / Vestiges & Claws (Vinyl)
Leonardo Marques / Curvas, Lados, Linhas Tortas, Sujas E Discretas (CD)
Lauren Desberg / Twenty First Century Problems (Data)
Aphex Twin - Computer Controlled Acoustic Instruments Pt2 (CD)
Colleen - Captain of None (Vinyl)
Colin Stetson and Sarah Neufeld - Never Were The Way She Was (Vinyl)

Nils Frahm - Solo (Data)
Dingo Bells - Maravilhas da Vida Moderna (Data)
Gilles Peterson Presents: Sonzeira - Brasil Bam Bam Bam (CD)
Tigran Hamasyan - Mockroot (CD)
V.A. - Marfa Myths Compilation (Data)
Judith Hill - Back In Time (Data)
Prefuse 73 - Travels In Constants, Vol. 25 (Data)
茶太 / bermei.inazawa - すこしのかなた (CD)


未着
Kamasi Washington - Epic (Vinyl)
Arca - Mutant (Vinyl)
Helios - Yume (Vinyl)
Luz de agua : Otras canciones - Sebastian Macchi, Claudio Bolzani, Fernando Silva (CD)


(冒頭の写真は、引っ越し前の駅の、最後のプラットホームからの1枚)




土曜日, 12月 19, 2015

「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」初回鑑賞、新三部作世代としての感想。


 A long time ago in a galaxy farfar away.







 スター・ウォーズがディズニーに買収され、ルーカスではなくJ・J・エイブラムスが監督をする、過剰にタイアップ商品が巷に溢れかえる最中、公開初日のチケット予約が始まった。僕は正直、その世間の浮かれた様子に全く乗る気がしなかった。だけどあんまりTwitterのタイムラインで盛り上がっているものだから、つい職場の近くの映画館の初日のチケットを購入した。そのお陰で、今日12月18日、この偉大なシリーズの公開初日・世界同時公開時の上映を体験することができた。 

「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は、徹底した旧三部作(通称エピソード4〜6)の世界観にオマージュを持ち、それを最善の形として作品とした。アメコミ映画などではよく、話のシリーズが行き詰まったりした折に、「リブート」と称してもう一度同じ話を違う形で作り直すという最映画化が多いのだが、スター・ウォーズにおいてはどうだろう。 

 最初の一作目を監督したジョージ・ルーカスが、90年代末から再び作ったスター・ウォーズの前史ともいえる、新三部作(通称エピソード1〜3)を撮った。再びスクリーンにスター・ウォーズが登場すると盛り上がりはしたものの、突飛なCGキャラクターや複雑な政治ゲーム、旧三部作の面影があまり分からない入り組んだ世界観などから、なぜだか評判が芳しくない。だからといって、スター・ウォーズがリブートしてまた、オリジナル一作目「新たなる希望」を作るわけにはいかない。(ジョージ・ルーカスは新三部作に体裁を合わせるように、旧三部作にCGを加えたり、俳優を組み替えたりもしたが)。新三部作を完成させたルーカスは、いつの間にかスター・ウォーズの製作を手放していた。そこで新たに監督となったJ・J・エイブラムス。彼が「ジェダイの復讐」(現:エピソード6:ジェダイの帰還)後の新たなスター・ウォーズを撮ったのだが・・ 

 公開初日の感想は、(Twitterのタイムラインを見る上では)絶賛の嵐だった。もちろん僕も、観終わった後は興奮を隠せなかった。






 これから映画館へ行こうと思っている方で、事前知識があまりないのならば、「新たなる希望」「帝国の逆襲」「ジェダイの帰還」と副題がついてるエピソード4〜6を見てから行くのと、知らずにいくのでは、この映画の見方も全く違うものになると思う。逆にエピソード1〜3は事前準備としては不要。(でも、そこがもどかしかった部分ではあるのだ)

 この感想に書いたとおり、この映画を賞賛したい点を、大きく4点あげたい。(以下、どのキャラクターが出る/出ない、物語展開における一部ネタバレ有り)





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「フォースの覚醒」における最も大切な意義は、オリジナルである旧三部作に登場したメインキャラクターである、C-3PO役アンソニー・ダニエルス、ハン・ソロ役ハリソン・フォード、レイア役キャリー・フィッシャー、そしてなんといってもルーク役のマーク・ハミルなどが、(こういう言い方もあれだが未だ現役であるうちに)再びスクリーンに復活させることができたことだと思う。同時に、シリーズ全ての音楽を担当しているジョン・ウィリアムスに関しても同様だ。ハリー・ポッターシリーズにおいては、ジョン・ウィリアムスが音楽を担当した3作目とそれ以降においては、個人的に思い入れもまるで違う。音楽というものは、話・演技と並ぶか、それ以上に重要なものなのだ。

 2点目は、前述した通りに、旧三部作へのオマージュやリスペクトに満ちているということ。それは作風においても言えることで、1作目である「新たなる希望」の最大の凄みは、「2001年宇宙の旅」などにおける難解なSF、アメリカン・ニューシネマなどで台頭した救いのない非娯楽的映画が多い風潮の最中、映画史初頭にあったようなシンプルな勧善懲悪の世界を宇宙活劇として蘇らしたこと。その上で神話などの、古典的な父と子の物語などといった物語を配する事で、普遍的な重みを映画に持たせることができたことは、一般的にもよく言われていることだとは思う。その元々あったエッセンスを1作目・2作目の展開を、「フォースの覚醒」では言わばなぞるかのようにリブートさせることで、スター・ウォーズシリーズの躍動感を取り戻すことができたこと。また、ハン・ソロの口癖や、キャラ同士の気軽なやり取りなどが、旧三部作と同じキャラクター・同じような新しいキャラクターによって再現されることだ。また、今作のマスコットとも言える「BB8」(上写真のドロイド)が、出番の薄いR2D2に変わって元気に動き回る。かわいい。

 3点目は、物語そのものを、オリジナルの登場人物のドラマによって大きく展開させたことだ。それ以上はネタバレとなるので控える。ラストシーンは物語外の時代の流れも含めて、意義あるシーンだった。

 4点目は、驚いたことに、買収先である「ディズニー」色が、全くないということだった。配給は「ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャー」のはずだが、冒頭には無音で唐突に製作である「ルーカスフィルム」、エンドロール後にもエイブラムスの会社である製作の「バッド・ロボット・プロダクションズ」のロゴ・映像がでるだけで、ディズニーはエンドロール中にあったディズニーサウンドという記載くらいしか出てこなかったのには驚いた(見落としただけかもしれないけれど)。20世紀フォックスのファンファーレがない(しかも初回上映においては予告・映画前の注意事項など一切ない)初めてのスター・ウォーズは、どこか厳かな雰囲気すらあった。世界観を大切にしている姿勢が素晴らしかった。あと付け足すとするなら、新三部作の際に追加された「エピソード◯」といった野暮ったい表記が、今作で再び撤廃されたことだ。

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 オマージュではない、エイブラムス版スター・ウォーズの特色として、主人公がストームトルーパーである、敵側の歩兵だということだ。しかも名前が、ルーカスデビュー作を思わせる英数字のみ。ストームトルーパーから脱走した際に「フィン」と名乗るようになるのだが。しかもイケメンの白人とは違う、田舎っぽさもあるアフリカ系である。旧三部作におけるテーマのひとつに「クローン兵」があった。ストームトルーパーはクローンではないが、統制を持たせるために幼少期から洗脳を施して兵役をするという。そう言った敵側における市井の視点はこれまでのシリーズでは希薄だった。

 もう一人の主人公「レイ」、強気な女性というとレイアも同様ではあったけれども、この映画においては、「新たなる希望」におけるルーク・スカイウォーカーが、この彼女にあたる。とても魅力的だった。



(以下、内容におけるネタバレあり)



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 あまり述べられていないが、やっぱり僕は「フォースの覚醒」を手放しで賞賛できない。

 一つめとしては、旧三部作をオマージュするがあまり、どうしてもそれらのシーンの二番煎じ感が否めない。「新たなる希望」におけるデススター破壊の出撃、あの息が詰まるような緊張感が、どうしても「フォースの覚醒」では感じられなかった。ルーカス自身が監督した新三部作の3作には、そういった事がなかった。また新しくスター・ウォーズをレイを主人公に置いて作るにあたって、本当に描きたいものは何か、今作では見えることができなかった。

 二つめは、この記事のタイトルにもあるように「新三部作」に対するリンクが、全くというほどないという事だった。「フォースの覚醒」を調べるにあたって、ネット上では「エピソード1をみなくてもいい」だの、「新三部作は凡作」だの散々な言われようであり、「フォースの覚醒」に盛り上がるファンも、自分より上の「オリジナル」世代か、逆に新三部作の後のスター・ウォーズを知らない世代が中心のようで、まるでひとつの欠落のように、新三部作・・アナキン・スカイウォーカー三部作を取り扱われることに凄く違和感を感じる。

 はっきりいって、僕にとってのスター・ウォーズは、ルーク・スカイウォーカーの物語ではなく、アナキン・スカイウォーカーの物語だ。中学生の時に当時の彼女といった、まだシネコンに駆逐されていない街の古びた映画館へ無理に誘ってみにいったのが「クローンの攻撃」だった。高校生の頃に、日本で殆ど行われていなかったデジタル上映を見るために、東京の東映撮影所近くの映画館へ行ってみにいった「シスの復讐」。当時のジョン・ウィリアムスの音楽は、80年代の頃とも違う奥行きがあり、何度も何度もサウンドトラックを聴いた(旧三部作に固着していない新しいテーマソングがどれも大好きだった)。エピソード3の時はクローン戦争を描いたノベライズ本にも手を出したりした。

 アナキン3部作は、魅力的なこれまでのキャラクターが誰もいない過去の時代の、少年アナキン・スカイウォーカーが成長し、恋愛し、そして堕ちる話である。過去作に対して思い入れが無いからか、アナキン、オビ=ワン、パドメ、あとパルパティーンなどのドラマ、政治的駆け引きと情勢の変化、宇宙に点在するいろんな惑星の広い世界観、ドロイドやクローンが入り乱れる戦争、それらのほうが十代の自分にとってはリアルタイムでもあり、しっくりきたのだ。都市や海中などのアクションにも驚いた。当時広まっていたホームシアターシステムの宣伝には、大抵「ファントム・メナス」におけるポッドレースの映像がつかわれていたものだった。

 三つめは、2人の主人公への感情移入がし辛いという点だった。レイとフィンはそれぞれ重い過去があるらしく、レイは外に出るチャンスがあるのに故郷に留まりたいと願うが、何でそこまで固着するのかは、あっさりとした回想でしか描かれない。フィンのトルーパー以前の事も同様だ。何で彼は殺しを拒んでしまうようになったのか。そのくせ、なんで彼がライトセーバーを起動させられたのかもよくわからなかった。人物に対する憎み恨み、ジェダイとシスの関係、その表現をこれからどう突き詰めるのだろうか。レイは誰にも教わらないのに、突然冷静になる描写が多々あったのも、天性がなせる技だったのか。うーん。


 スター・ウォーズが再び盛り上がったものの、相対的にエピソード1〜3の意味が下がってしまうような気がして、そこに危機感をもったので、こうダラダラと長文を書いてしまった。もしかしたらエピソード8で、ジェダイの歴史をたどる際に、エピソード1〜3の物語も劇中で拾われるのかもしれない。少なくともまた後数年は、映画館で新作のスター・ウォーズがみられるのだ。

 もう一度僕は、数年ぶりに「エピソード1」から順に見返して、また「フォースの覚醒」を見るために映画館へ行きたい。

火曜日, 12月 15, 2015

Best Album by Colstrains 2010-2016


過去に作った年間ベストアルバムを振り返ってみる。
毎年年間ベスト作成前に更新。(2017年12月14日現在)


2010


20:Lou Rhodes - One Good Thing 
19:岡林信康ロックミュージック 
18:青柳拓次 - まわし飲み 
17:Gold Panda –Luch Shiner
16:The Roots – How I Got Over 
15:The Books – The Way Out 
14:Deerhunter - Halcyon Digest
13:やくしまるえつことd.v.d - Blu-Day 
12:The Cinematic Orchestra –Late Night Tales (Compilation)
11:Daniel Kwon – Daniel Kwon 
10:M.I.A – M A Y A 
9:Local Natives – Gorilla Manor 
8:放課後ティータイム放課後ティータイム
7:Flying Lotus – Cosmogramma 
6:Ariel Pink's Haunted Graffiti - Before Today 
5:Owen Pallett – Heartland
4:相対性理論シンクロニシティーン 
3:Sufjan stevens - Age of Adz 
2:The Arcade Fire – Suburbs 
1:Beach House – Teen Dream



この時代から自分はCDから極力アナログ盤で買おうと決めていた。一位のビーチハウスも後ほどアナログ盤で買い直したりもした。Teen Dreamはこの時だからこそ生まれた名盤で、この焦燥感あるインディ・ロックという形では、もうこれを越す作品はできないと思う。

今敢えて取り上げるとするならば、「The Arcade Fire – Suburbs 」は2015年も非常に重要なアルバムだった(だから翌年にまたいれたりしてる)。ダニエル・クオンのデビュー作も、今から考えるとトップ5に入れて然るべき名盤。


2011

(23歳)

10:幻とのつきあい方 ~ 坂本慎太郎
9Toro Y Moi - Underneath the Pine
8salyuxsalyu ~ s(o)un(d)beams
7Hidden Orchestra ~ Night Walks
6Fleet Foxes - Helplessness Blues
5豊崎愛生 ~ love your life,love my life
4Arcade Fire ~ Scenes from the Suburbs
3:神聖かまってちゃん ~ つまんね
2James Blake ~ James Blake
1Radiohead ~ The King of Limbs



震災の年。レコード店でアルバイトをしていた年。ひとり暮らしを始めた年。その割に無難なリスト。レコード店では坂本慎太郎のファーストとJames Blakeはジャンル担当を越えて誰もが評価して買っていた。今1枚選ぶなら、やっぱりアイコンとしてのJames Blakeのデビュー作の存在感は計り知れなかったのでそれを。


2012

(24歳)

10∆ (alt-J) - An Awesome Wave
9The xx - Coexist
8Cloud Nothings - Attack On Memory
7 : Flying Lotus - Until The Quiet Comes
6 : Grizzly Bear - Shields
5 : V.A. - The Cinematic Orchestra presents In Motion #1
4 : Of Monsters And Men - My Head Is An Animal
3 : Mumford & Sons - Babel
2 : 高木正勝 - おおかみこどもの雨と雪 OST 
1 : ザ・なつやすみバンド - TNB!



地元弁当配送業に就職した年。この年の1位は当時は別格の1位だった。今年メジャーから新作も出たけれど、この当時のデビュー作の存在感は個人的に計り知れないものがあった。音楽的に特別とかそういうものじゃなくて、仕事中の激務の最中の側にいつもいてくれた作品。オブモンやマムフォードも全盛期だった。


2013

(25歳)

20Toro y Moi - Anything in Return
19Juana Molina - Wed 21
18Local Natives - Hummingbird
17:クラムボン - LOVER ALBUM 2
16Sampha - Dual
15Airhead - For Years
14Rくん - Rくん
13Jonny Greenwood - The Master OST
12Phil France - The Swimmer
11Volcano Choir - Repave
10These New Puritans - Field of Reeds
9:二階堂和美 - ジブリと私とかぐや姫
8Antonio Loureiro - Só
7Son Lux - Lanterns
6:森は生きている - 森は生きている
5my bloody valentine - m b v 
4Duft Punk - Random Access Memories
3James Blake - Overgrown
2King Krule - 6 Feet Beneath the Moon
1Arcade Fire - Reflektor



職場の近くに引っ越した年。気仙沼と福井へいった年。Keyにはまった年。未だによく聞いてるのはAntonio Loureiro(今年やっと来日公演も見られた)。1枚選ぶならDuft Punkかな。NHKドラマのあまちゃん「潮騒のメモリー」とダフトパンクの「ゲットラッキー」は2大アンセムだった。


2014


20/ Giant Claw - Dark Web
19/ Owen Pallett - In Conflict
18/ Skymark - Primeiras Impressões
17/ 吉田ヨウヘイgroup - Smart Citizen­
16/ ROTH BART BARON - ロットバルトバロンの氷河期
15/ Ásgeir - In the Silence
14/ GoGo Penguin - v2.0
13/ Halls - Love To Give
12/ Millie & Andrea - Drop The Vowels
11/ Arca - Xen
10/ Thom Yorke - Tomorrow s Modern Boxes
09/ Lars Danielsson - Liberetto II
08/ 坂本慎太郎 Shintaro Sakamoto - ナマで踊ろう
07/ Ben Watt - Hendra
06/ Flying Lotus - You're Dead!
05/ Karen O - Crush Songs
04/ FKA twigs - LP1
03/ Oneohtrix Point Never - Commissions I
02/ 高木正勝 - かがやき
01/ NovemberDecember - From The Swing, Into The Deep


会社を辞めて職業訓練してSE業へ職種を変えた年。会社が渋谷だったからか、タワレコ渋谷店に色々と影響を受けた(グレン・グールドもそれで良く聴いた)あとブラジル音楽(特にミルトン・ナシメント)にも夢中になった。ArcaとFKA twigsは中々衝撃的だった。一位は年末猛烈に忙しい時(しかも初めて同人誌つくりとかしてて)心身くたくたの最中にこれを終電間際の電車の中で聴いて号泣していたのを、近くのご婦人方にぎょっとした目でみられたのを未だに覚えてる。段々脱インディロックしていった。


2015 

http://kollsstrains.blogspot.jp/2015/12/2015-best-album.html
(27歳)

20 Fabiano Do Nascimento - Dança Dos Tempos (Vinyl)
19 ツチヤニボンド - ツチヤニボンド 3 (CD)
18 Masayoshi Fujita - Apologues (Vinyl)
17 ザ・なつやすみバンド - パラード (CD)
16 Henning Schmiedt - walzer (CD)
15 Tuxedo - Tuxedo (Vinyl)
14 ROTH BART BARON - ATOM (Vinyl)
13 GABI - Sympathy (Vinyl)
12 Daniel Kwon - ノーツ (CD)
11 Tigran Hamasyan, Yerevan State Chamber Choir, Harutyun Topikyan - Luys I Luso (CD)
10 Will Butler - Policy (Vinyl)
09 cero - Obscure Ride (Vinyl)
08 Alva Noto - Xerrox Vol.3 (Vinyl)
07 Kendrick Lamar - To Pimp A Butterfly (Vinyl)
06 Alabama Shakes - Sound & Color (Vinyl)
05 D'Angelo And The Vanguard - Black Messiah (Vinyl)
04 V.A. - ローリング☆ガールズ 主題歌集//ソング集//ソング集II (CD)
03 Isis Giraldo Poetry Project - PADRE (Data)
02 Sufjan Stevens - Carrie & Lowell (Vinyl)
01 Oneohtrix Point Never - Garden of Delete (Vinyl)



職場が川崎となり、埼玉から毎日東京を横断をしていた。この年の暮れに川崎に引越をした(その直後に職場が変わった)。祖父と祖母が亡くなった。AppleMusicが始まった。麻枝准の同人誌に参加した。魔の27歳になった。パリ同時多発テロが起きた。ミシェル・ウエルベックが文庫化した。2016年の末に改めてこのリストをみると、だいぶ自分の傾向が固まってきてしまったなと思う。(またこの年から、年間リストはブログでまとめるようになった。)


2016 

http://kollsstrains.blogspot.jp/2016/12/2016-best-album-by-colstrains.html
(28歳)

20 Gold Panda - Good Luck And Do Your Best (Vinyl)
19 青葉市子 - マホロボシヤ (Vinyl)
18 Tigran Hamasyan, Arve Henriksen, Eivind Aarset, Jan Bang - Atmosphères (CD)
17 Andre Mehmari & Antnio Loureiro - Mehmari Loureiro Duo (CD)
16 Ben Watt - Fever Dream (Vinyl)
15 坂本慎太郎 - できれば愛を (Vinyl)
14 The Avalanches - Wildflower (Vinyl)
13 Jamie Isaac - Couch Baby (Vinyl)
12 鷺巣詩郎 , 伊福部昭 - シン・ゴジラ音楽集 (CD)
11 ミツメ - A Long Day (Vinyl)
10 Radiohead - A Moon Shaped Pool (Vinyl)
09 サニーデイ・サービス - DANCE TO YOU (Tape)
08 Joana Queiroz, Rafael Martini, Bernardo Ramos - Gesto (CD)
07 Max Graef & Glenn Astro - The Yard Work Simulator (Vinyl)
06 Mr. BEATS AKA DJ CELORY - J Dilla Mix Vol.1 (CD)
05 BADBADNOTGOOD - IV (Vinyl)
04 Dhafer Youssef - Diwan of Beauty and Odd (Vinyl)
03 Aleem Khan - URBANA CHAMPAIGN (Tape)
02 David Bowie - ★ (Blackstar) (Vinyl)
01 Jameszoo - Fool (Vinyl)



バンドの練習中にデヴィッド・ボウイの訃報を聞いた。そのバンドも離れ、付き合い始めた女性とも別れ、SEの仕事もうまく行かず悩みつつも、何とか27歳を超えた年。プリンスも亡くなった。「この世界の片隅に」など、邦画が豊作だった。夏コミにて初めてプレスされたCDに自分の音源を収録することができた。




木曜日, 11月 26, 2015

死んだセカイ戦線「Life is like a Melody ―麻枝准トリビュート」について こるすとれいんす




2015年12月30日追記:コミックマーケット89にて頒布します。自分はただの一寄稿人ではありますが、当日ブースで売り子のお手伝いをすることになりました。



エッセイ「麻枝准と連なる音楽ジャンル・アルバム」寄稿、
座談「Heartily Song――麻枝准の音楽は、なぜ心を揺さぶるのか?」へ参加しました。(URL先にて試し読みができます)

また、同誌へ提供した楽曲の視聴音源もアップいたしました。






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Keyのシナリオライター・作曲家の【麻枝准】氏をトリビュートした合同誌、文フリで頒布された、死んだセカイ戦線「Life is like a Melody ―麻枝准トリビュート」(冒頭写真右)




読み終えた後に、うわあああって走り出したくなるような本、そんな同人誌だった。色々と感想がぶわーっと頭のなかで走ったから、なんとか今のうちに感想を書こうと思ったのに、言葉がどんどんと流れていってしまって、何をかけばいいのか分からなくなってしまった―。

まずは一読者として、この本を3日間かけて読み終えることができた。順を追って・・


◯各章の感想


・巻頭に、だーまえ(麻枝准の愛称)の大学時代の友人の吉田さんのインタビュー。彼の知られざる裏話というレベルの内容ではなく、吉田さん自身の波乱ある半生と、成功していっただーまえとの対比の物語でもあり、最後の質問である「児童福祉の立場から見るKeyの物語」に至っては、現実の子どもたちの問題と街の意味というものを、Keyという作品を経るからみえる。そこの最後の問いかけが、幻影と現実を描く麻枝作品の本質そのものを、当事者の重み故に、リアルに受け止めさせられる、必読の内容だった。

・多賀宮さんの「智代アフター」論。索引と本文の重層的なテクストで、一番最初の(修正が入る前の)智代アフターにおける衝撃と、この作品のもつ麻枝准の作家性そのものを綴る。実は、僕は個人的に「智代アフター」の初回版へは否定的で(主に冒頭部分のセクシャルシーン)、これからプレイをしようとしていた友達には、初回版に手を出すのはやめといたほうがいいよ、などと言ってしまってたのは愚かだったなと反省・・プレイして直ぐ再プレイをした数少ない作品だった。

・村上裕一氏の麻枝准論。冒頭にZABADAKの「休まない翼」が引用された意味とは。三島由紀夫の「豊饒の海」に手を出したくなっちゃた。月を柱とした重厚な評論。

・土屋誠一氏のAngel Beats!覚書。AB!の根本部分に関しては、思えばしっかりと考えたことがなかった。この世界と、あの「ANGEL PLAYER」―。Charlotteもそうだけど、だーまえのアニメ作品はしっかりと紐解くと、過去のゲーム作品に匹敵する情報量があるにも関わらず、気が付かずに通りすぎてしまう所が多すぎてしまって(ついでにノイズも多分にあって)見なければいけない部分を見逃してしまって、とても勿体無いことをしていたのかもしれない。

・峰尾さんのONE論。ONEも恥ずかしいことに、メインヒロインのルートしかちゃんとやったことがなかった。他のシナリオの凄みを知ることができた。やらなくちゃ。

・北出さんの久弥直樹と対比した麻枝准論。過去作品ではなく、それぞれの最新作である「Charlotte」と「天体のメソッド」をメインに取り上げているからこそ、作家性がよりリアルに浮き出させる。両作品とも、ビジュアルノベルゲームの金字塔の一つになった「Kanon」と比べると、2つのアニメ作品の持つ作品力は(初見時では)劣るのかもしれない。なのに、ふとそれぞれの作品のキャラクターや情景が蘇ってきて、唐突に大切な「何か」を提示させられてくる。

・ワニウエイブさんの、十代を思い返す音楽とサブカルチャーの自分自身のエッセイ。あの時代の「オルタナティブ」に直接触れたその躍動感。僕はレディオヘッドもアニメもKeyも、リアルタイムでは主要なタイトルに向き合うことができなかった。次にある僕自身の音楽レビューと重なるようなテーマだったから、ある意味では真逆ともいえるそのスタンスが凄く面白かった。

・こるすとれいんすの、麻枝准が影響を受けた音楽レビュー。一読者として読むと、僕自身と同じ音楽リスナー狂いであるのに、その音楽を聞くスタンスはストイックに作家性に根ざしたものなのだなと、そのブレなさがすごいなと思った。

・各イラスト。スナップショットのような、それぞれの作品の一瞬を、それぞれの絵かきさんが描いていて、その色々な見方がKeyの広がりそのもののようだった。

・音楽座談会。だーまえの作る音楽、聞く音楽、構造、変化など、スタンスが違う語り手だからこそ、気が付かなかった部分が沢山知ることができた。付録の執筆陣による音源も合わせて。

・あさいさんのエッセイの、ストレートに書かれた青春時代とKeyの思い出、yuyagiriさんのエッセイにおける、他の書き手にはあまりなかった「東映版」Keyアニメ作品をリアルタイムにうけた感想もあった。麻枝准が好きだ!という文こそこの本の中核なのだ。

・meta2さんの聖地巡礼記。旅エッセイだから、本当に深夜バスにのって和歌山をめぐるようで、めぐるめく写真も重ねて楽しかった。けれども、その場所も時が過ぎてどんどん風景が変わっている虚空さも同時に書かれている。結末部分では、地域感としてのKeyの考察も。

・Charlotteを中心としたトーク。話の流れで思いも寄らず、話がまとまっていったり、以外な共通点と繋がったり、Charlotteを(いわゆる信者的な持ち上げではない)ポジティブな視点からの見方がどんどんと出てくる躍動感ある文で、その謎の意気投合感がアホらしくも面白かった。中々見たことのない、Keyの「漫才」についてもしっかりと語られてた。

・井坂優介氏のKeyトリビュート短篇小説。「AIR」の根幹部分のアナザーストーリーともいえる力作。戦争。家族。孤独。言葉。「CLANNAD」の様相とも重なる。この短編小説が最後に置かれるからこその、多角的なKeyのものがたり。


◯全体の感想


編集長のmeta2さんは現役大学生。他の一般寄稿者も10代〜20代前半が中心で、はっきりいってビジュアルノベルゲーム(その中心の一つであるKey)なんて「一昔前」のものだったはずなのに、今なおリアルタイムの若者を魅了させる(現在放送のアニメ作品だけでなく、タクティクス時代のゲームでさえも)そのKeyの底力が、今回のこの本の登場で、図らずも浮き上がった。

多くの同人誌はしっかりと練られた批評を集めた物が多く、半ばプロのような完成度のものも多い。反面、処女作とは思えないセミプロな装丁やコンテンツはあるものの、この麻枝准本は、素人の素人による、好きが昂じてできてしまった同人誌らしい同人誌であるともいえる。いわゆる「商業誌」には絶対になり得ないけれども、その青臭さが大きな魅力。

ただ、仕方がなかったとはいえ、「麻枝准」という作家をテーマとした本だったからか、それぞれの書き手の参照した文学の大半が「村上春樹(の世界の終り〜)」となってしまったのは勿体無かった。麻枝准という根っこの、その先にあるものが知ることができたら良かったのかもしれない。(けれども、それだと考察本になってしまって、この本とのスタンスとずれてしまうのかも)その反面、音楽への考察は他のアニメ考察本には全くないディープな部分まで語っていて、それもまた独特。

冒頭で書いたように、妙なエモーショナルがこの本には詰められている。それを、ひとつの「形」としてまとめ上げたこそに意味があるのだと思う。


◯寄稿者側として


僕自身(本誌内では書かなかったけれども)、北出さんや井坂さんと同じ27歳で、いわゆる(社会的に成熟して父親にもならなくちゃいけないような)おじさんと、(色んな庇護下にある)若者の、ギリギリの狭間の歳に、この企画に参加できた事は、個人的にも意味あることだった。(27歳といえば、多くのロックシンガーが自殺をする歳でも有名だ)

一番上の写真にあるように、これまで「Key」の同人誌、「郊外」の同人誌を企画して編集して頒布した。それらをつくった意味合いは、第一に色々な作品に出会ったことの自分の中での整理や総括のため、そしてその先に進むためのひとつのピリオドとして製作したという、合同誌であったのにも関わらず、かなり個人的な意味合いが大きかった。だからKeyへの自分の気持ちは、この麻枝准本ではなく、自分が編集した「Key本」へ綴った。

反面、麻枝准本への自分のスタンスは、あまり自我を出さないで、読者の役に立つような「ガイド」として役になったらいいなという気持ちで、音楽に関する章を書いた。これも編集の方には色々とお世話になってしまい、僕の最終稿の後に結構手を加えた文が、今回の文だったりする。僕自身が半年前に編集の経験した事が反転して、今度は寄稿者としての経験が合い重なって、色々なきつい部分を実体験できたし、理解することも出来たのかもしれない。

僕自身経験したことでもあるけれど、合同の本をつくったがこそ、色々な人との出会いがあって、きっかけがあって、自分の視界が広がったりする。この本を最初に頒布した文フリのブースにおいても、色々な交流があった。それは別に著名な方であったとしても、全く無名な方だったとしても、同様に価値あることだと思う。

音楽で有名な説話で、NYのバンド「Velvet Underground」のレコードを買った人間は、誰もがミュージシャンになっただとか、「Sex Pistols」の最初のライブを観た見た人間が、みんな音楽を始めた―だとかがあるけれども、若い人が偶然集まった「麻枝准」本においても、もしかしたら似たような事があるのかもしれない。

僕は思春期においての強烈な体験で「Key」を知ることができなかった。先にロックを知り、映画「It's A Wonderful Life!(素晴らしき哉、人生!)」を毎年見たり、村上春樹をほぼ全部の作品を読み、買っていった10代を経た後で、20代になってようやく(それらと関係があるというきっかけで)Keyを知った。だから、考え方としては、中心にあるのは別のもので、Keyがそれにうまく合致してしまった。今の大人の風景が、Keyの作品にある風景と重なってしまった。だから夢中になることができた。不思議な縁だ。

ここ最近「リトバス」のシナリオを書かれた樫田レオさんや、棗鈴役の声優の民安ともえさんがご結婚されたというニュースが相次いではいった。そうした物事の変化に、僕自身が含まれていくのかどうかはわからない。だけど、これから歩む人生の中で、どこかで必ずKeyの作品は、自分の横に寄り添い、きっかけとなる存在になると思う。そして過去でも未来でもない、他でもない今だったから、この本の片隅を作ることができた。関係する方々、本当にありがとうございました。

* * *

「麻枝准トリビュート本」はコミックマーケット、また通販にて後日再販するとのことなので、欲しいという方はホームページなどを追って頂けたら幸いです。またほんの数部ですが、サークル「こるすとれいんす」がC87で頒布した「Key's FOUR SEASONS」(800円+送料)も極少数ありますので、ご希望の方はTwitterへご連絡ください。






土曜日, 9月 19, 2015

「Key's FOUR SEASONS」「ポップカルチャーから紐解く2010年代の ”郊外” SUBURBS」再版しました





現在全て完売をしておりました、C87で頒布した「Key's FOUR SEASONS」(右)、C88で頒布した「ポップカルチャーから紐解く2010年代の ”郊外” SUBURBS」(左)、それぞれ極部数で再版することができました。






2015年9月20日に行われる「KeyPoints8 + Key Tactics eXpo」という Keyの同人誌即売会にて、今回再版した「Key's FOUR SEASONS」を、委託頒布いたします。 
◎日時:2015年9月20日(日)11:00~15:00 
◎場所:大田区産業プラザPiO 1階大展示ホール全面 
◎委託先:サークル「死んだセカイ戦線(麻枝節トリビュート本製作サークル)





「Key's FOUR SEASONS」は、ページ校正を大幅に変更・さらに追加として、別紙にて同C87で限定頒布した対談ペーパー「リトルバスターズ!反復する福音書」、あゆけっと準備会様による「CLANNAD10周年アンソロジー本」に寄稿した、CLANNADの短篇小説も掲載いたしました。全97ページとなり、表紙もカラー、裏表紙もリメイクし、背表紙も新たにつけてみました。









「Key's FOUR SEASONS」左が旧版、右が新版です。紙質やレイアウトも大きく見なおし、読みやすくなったと思います。


C88で早々に即売してしまった「郊外」本も含めまして、通信販売も承ります。ご希望でしたら、下記Twitterアカウントへ(リプライ・ダイレクトメッセージにて)ご連絡頂けたら幸いです。


Twitter:こるすとれいんす


金曜日, 8月 07, 2015

ポップカルチャーから紐解く2010年代の ”郊外” SUBURBS











ポップカルチャーから紐解く
2010年代の ”郊外” SUBURBS

     イベント会場 : コミックマーケット88 (1日目)
     日時     : 2015年8月14日(金)10:00〜18:00
     スペース   : 東地区 "フ" ブロック 55a 
              コミケウェブカタログページ(サークル場所の地図あり)
     サークル名  : こるすとれいんす
     会場頒布価格 : 800円(完売御礼)
     仕様     : A5サイズ、全98ページ(モノクロ)



*  *  *


報告(2015年8月30日)


コミックマーケット88その他にて、初版完売致しました!



ひとえに、関わって頂いた寄稿者の方々のおかげです。
また、お手にとっていただいた方も、感想をツイートしていただいた方も、
本当にありがとうございました!


①今後の購入方法について

2015年9月中旬に同仕様にて、極少部にて再刷します。
すでにご連絡頂いている方へは、9月末までに配送予定です。
購入ご希望の方はTwitter(https://twitter.com/colstrains002)へご連絡ください。
(それも売り切れましたら今回で絶版となりますので・・)

②サークル:こるすとれいんすの今後について

こるすとれいんす主催での同人誌編集、
またコミックマーケットなどでの頒布は、ひとまず休止いたします。

わたくし事としては、
別所にてKeyの「麻枝准」をテーマとした同人誌に参加します。
冬のコミケなどで頒布予定ですので、ご興味があればよろしくお願いします。




*  *  *


C88お品書き



・(既刊)ビジュアルノベルゲームブランド:Keyの作品の魅力を
それぞれの目線から綴った合同同人誌

・(委託)草野こーさんが手がける音楽同ZIN誌『Bad Apple』の第二弾
DALLJUB STEP CLUB、吉田ヨウヘイGroup、mothercoat へのインタビュー

*  *  *


参加ライター・内容紹介




郊外論入門 ~その7つのイメージから~
著:スプラウト



これまでのカルチャーのなかで、どのように郊外論がされてきたのか?
簡易的かつディープにまとめられています!








郊外で聴きたいキリンジの楽曲十二選 feat.CLANNAD
著:眠れる兎6号


郊外。背景にあるそのリンクを、
キリンジの楽曲をCLANNADのキャラクター達が紹介して繋げ広げます。 








『CLANNAD』の聖地 千里山を歩いて
著:眠れる兎6号


大阪、千里山の風景から辿るCLANNADの舞台、
そして自身の故郷を写真と一緒にまとめた小エッセイ。











不動産と音楽が持ちうる 物語が導く終着地について(仮)
著:くさのこー


自力で、音楽同ZINE誌『Bad Apple』発行もされている著者が、
郊外を歩いて見えてくる景色と音楽、その先にある意味を探します。








彼女と彼女から見える町の風景
著:マキタユウスケ



町の風景が見える女性と出会ったのは

生まれて初めての事だった。

どこかの町の、その日の風景。

彼女と話していると、

切り取られた町の風景が僕の頭には鮮明に浮かんで来る…

地方都市の大学で出会った「僕」は

「彼女」を通じて不思議な「町の風景」を見る。

それは一体どこの町で、

またどうしてそれが見えるようになったのか?

これはのどかな郊外を舞台とする、少しだけ謎めいた短編小説です。








パラダイス・バイ・ ザ・BS
著:akr


ブルース・スプリングスティーン、そしてアメリカ郊外風景から産まれた映画の数々。
70年代から10年代へと続くその道を追います。






郊外の〝首都〟から 〝森林文化都市〟まで
~ガッチャマンクラウズの「立川」と ヤマノススメの「飯能」~

著:スプラウト

郊外とは閉じられた世界なのか?
それを2つの舞台から改めて捉えなおします。











NO GO, NO CARS GO —サイタマの国道で聴いた音楽と—
こるすとれいんす


家を出て、サイタマで燻る不満の背景にあった、音楽や映画。
それらを足がかりに、僕自身の行き着く先を探した、独白エッセイです。










98ページに詰め込んだ、僕達なりの渾身の一冊です。
表紙の絵も油で描いてカラーで出しました。
お金もなく極少発行。
他では絶対読めない文がぎっしりの
「ポップカルチャーから紐解く2010年代の ”郊外” SUBURBS」

なにとぞ、よろしくお願いします!




















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