木曜日, 4月 08, 2010

Il Vangelo Secondo Matteo 「奇跡の丘」 映画感想記





序盤のマリアとジョセフの無言の、顔だけを切り取った映像は、まさに絵画のようであり、全くなんの説明がなく、マタイ伝の行間をそのまま空白として保って いるからこそ、逆にその行間の深さを描写できたのではないかと思う。

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まずは、ここを引用したいと思う。アマゾンの商品カスタマーレビューより。

ヨハネパウロ二世の推薦する映画第二位の映画。カトリック信者ならこれ以上の信頼できる評価は無いでしょう。

1位「シンドラーのリスト」(93)
2位「奇跡の丘」(64)
3位「ライフ・イズ・ビューティフル」(97)
4位「モダン・タイムス」(36)

5位「ナザレのイエス」(77)
6位「ベン・ハー」(59)
7位「わが命つきるとも」(66)
8位「2001年宇宙の旅」(68)
9位「8 1/2」(63)
10位「山猫」(63)

一見進化論描写ととられかねない「2001年宇宙の旅」を推薦映画に選んだあたり、ヨハネ・パウロ二世はちゃんと深いところまで観ているなと思った。そこで初めて見つけた映画は幾つかあるが、数々の熱いレビューが書かれている「奇跡の丘」に興味がでて(このレビュー元でもあるし)、今年の受難週間の復活祭にでも見てみようと思った。(毎年、映画「パッション」の受難描写はさすがに見られないので・・・)

レンタルをしようと検索をかけたけど引っ掛からず、仕方無く楽天より注文。受難週には間に合ったけど、なんだかバタバタしてしまい、結局この期間に見ることができず、復活祭から数日たった今日、ようやく鑑賞することができた。家族もちょうど出掛け、一人留守番のなか―。


(以下、結末までネタばれしてるけど、イエスの生涯は周知のごとく?)


この映画は、誕生、受難や十字架、復活など、ハイライトシーンにし易いところを選ばず、イエスによる「説教」こそがこの作品のメインとなっている。そこが凄い。とにかくイエスや他の登場人物の内面描写や社会描写というのさえ、極力排除し、ベースになっている、新約聖書の「マタイによる福音書」の枠の中で、勢い良く迫力をもって映画が進む。よって、福音書の内容を知らない人にとっては、一部説明不足と感じるシーンがでてくるのかもしれない(洗礼者ヨハネの首切シーンなど)。

初めて(新約)聖書を読んで受けた衝撃は、やっぱり最初にある「マタイによる福音書」に書かれた、イエスの説教だった。今まで色々な本を読んできたが、この「マタイ伝」ほどパンチの聞いた本はなかった。この映画も、マタイ伝のその説教の「強さ」を全面に出していた。この映画にあるイエスは、優しさも感じられるが、それ以上に「怒り」を強く受けた。



この映画は、DVDパッケージなんかから、反ハリウッドのアート映画とも受け取れる。古いハリウッドによる聖書関連作品の、「十戒」「ベン・ハー」から感じられる仰々しさが、この作品からは微塵も感じられない(これらハリウッド作品を否定してるわけじゃない)。50年代のこれらの作品はカラーだが、60年代のこのイタリア映画は全編モノクロでつくられている。そして、使用する音楽も、モーツァルト『アダージョとフーガ』、バッハ『マタイ受難曲』終曲なんかが使われていたらしいが、それ以上にインパクトのあった、南米風のコーラスソングと、フォークミュージック風の曲と、絶対にハリウッドでは使われないだろうと思われる音楽が、絶妙に取り入れられている。

一番感心したのが、福音書を読んでも受け入れがたいともいえる、「奇跡」を起こすシーンの数々の描写。パンを増やし、顔の潰れたツァーラト患者を癒し、水の上を歩く奇跡が、まるで地味で、そして余計な添加物を加えないがために、全く自然に奇跡を驚嘆して受け止めることができるのだ。これはパゾリーニ監督が無神論者だっただからだろうか。大天使ガブリエルに関しても、同じシーンにぱっと現れる不意の描写でも表せる、彼女の明るく鋭い目の演技が凄い。

極力余計なものを作中に加えていなかったが、イエスの母が久しぶりに訪れたときに「母とは誰か」とイエスが言うシーン。そんなに冷たくあしらうことないんじゃないかと思ってしまったが、帰り際にイエスの顔にうっすらと涙が流れていた、その描写に現れるイエス、そして母マリアの苦悩を敢えて言葉にしなくても受け取めることができる。そしてそれが、最後の十字架のシーンにも見受けられるのだ。

メル・ギブソンの「パッション」を観ていたためか、この映画のなかの十字架のシーンは少し物足りなさを感じたのは事実。しかしパッションとの製作年度は全く違う上、パッションのテーマが受難と復活であることから、この「奇跡の丘」と根本的にテーマが異なることも分からなくてはならない。パッションでは、受難・群集やパリサイ派宗教家の怒りの理由が判りづらいという欠点もあった。逆にこの作品では、十字架に到るまでのその理由を「マタイ伝」をなぞることで、それらが刳るようにむき出しになっている。イエスのエルサレムによるパリサイ派攻撃は半端なかった。

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