金曜日, 2月 18, 2011

On A Friday・・・ Radiohead / The King Of Limbs (2011)




 

部屋を真っ暗闇して、ヘッドフォンをつけて、踊って、倒れこんで、目をぎゅっとつぶって、37.4分の深い世界に浸った。

こんなに集中をして音楽を聴いたのは、いつぶりの事だろうか。

最初の崩れるようなリズム、深いエコー、広がる音楽。In Rainbowsでは余計な装飾を剥ぎ取った見事なアルバムだったが、この作品にあるのは、あの時にあったリズムに物凄く念密な背景画があるよう。最初はただリズムに合わせてむしゃくしゃに身体を動かしていた。次第に、息を殺して、その音楽と正面向き合わざるを得なくなっていった。

RADIOHEAD King of Limbs 公式ページ

昔は僅かな小遣いからCDを買って、プレーヤーにセットして、ただ音楽とだけ向き合っていた。

それがいつの間にか、ネットであらゆる情報や感想や評価を見て、結果的に音楽の幅を広げたのだけど、そこにある音楽にはどこか、他人の評価が既にくっついた状態だったのかもしれない。

発売日当日に、未だ誰も読んだことのないまっさらな村上春樹の新作を、深夜に独りで読んでいるような。そんな感じ。

一体音楽がBGMとしての比重が大きくなったのはいつからなんだろう。iPodで何かをしたり、移動しながら聴いたり。YouTubeでPVを見ながら聴いたり。誰かの感想が書いてあるウェブページ、ブックレート、雑誌記事を読みながら聴いたり。そんな聞き方でいいんだろうか。

昨日は3時半に寝て、今日は13時半に起きて、不思議に長い映画のような夢をみていた。

部屋をひっくり返して机をどかしてダンボール積んで、慌てて車に乗って郵便局に行ったりして。

7時に渋谷で何かが起きるだの、ネットで公開されるだのの情報に翻弄されて。

夕食を食べて8時半に、新作が既にダウンロードできるだの、ちゃんとした方法が分らないまま無茶苦茶にやり方を探しながら、何とかダウンロードして、iTunesにいれて。

こうやって2度目の視聴をしながら感想をかける。誰の感想もみないまっさらな状態で。数ヵ月後にはレコードが届く。それまで何度もこの音のいいMP3を聴いてみようと思う。



街角に置いてあるテレビ映像のように、インディロック、ダブステップ、色々なものが音楽の先をどんどん進み、それらに感心して幾つか手に入れたりして、これが今の時代の音楽なんだって感じていた。

レディオヘッドのこの作品には、集中して映画館でみた一遍の巨匠による映画のように、ただ通り過ぎるだけのものとはまるで違う所に歩きがする。フォーマットがデータであるから軽いというのは全く違うと思う。レコードという物体でさらりと聴いたインディの新作があったりする。

たった37.4分しかないこのアルバムだけれど、初めて目をつぶって集中して聴いた時、色々な思いが折り重なって、物凄く長い時間に感じられた。

真っ暗にした部屋は、外から漏れる電灯の灯りでわずかに散らかった荷物が見える。小学生の頃から使っていたこの自分の部屋にいるも、あと数日しかないんだな・・。

レディオヘッドの最高傑作はOKコンピュータだと思う。けれども、決して順序だて出来ないように、それぞれのアルバムにはちゃんと小宇宙が創られていると思うし、新作はその世界が一段と深みが増している。リアルタイムでレディオヘッドを聴けるからこそそう思うのであって、数十年後にレディオヘッドを聞く人にとって、このアルバムが最高傑作であって然るべき作品じゃないかな。トレンドや主流と全く違う、彼らだけの小宇宙。

そんな金曜日の夜。

On A Friday

The King of Limbs
The King of LimbsRadiohead


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