月曜日, 4月 18, 2011

挫折と、地震と、最近見た映画「わたしを離さないで」 Never Let Me Go




1

3月から広い新居で一人暮らし。まだまだ寒い風の吹く二月末から、色んな家具や、家電の買い物、引っ越しの準備と片付け、色んな所での契約や身分変更、初めての一人暮らしに思う不安の日々、内定先への課題もこなしていき、バイトをやめ、ようやく独立できるのか・・・

と思った最中の、大地震前日に知った単位申請の不手際から起こった、予備にとった科目がとれなかったことによる進路の挫折と、大地震でおきた混乱。

色んな人に心配と迷惑をかけ、内定と卒業を失って、またもや色んな現実と否応なしに向き合わないといけなくなった。東北では巨大な数の死者、今尚続く大地震、今まで築き上げてきた何もかもを失った人達がいる中で、いったい自分は何をしているんだろう。

大学へまた百万円以上を親に払ってもらう必要性をちゃんと示さないといけないのに、社会から何だかぽつんと置いてきぼりにされてしまった気持ちのまま、朝起きる時間もばらばらに、一応掃除洗濯買い物などの家事をこなしつつ、世間がスーツを来て社会に出ているさなか、ネットやアニメを見ていて日々つぶしてく毎日。(単純でパターン化されて分かりやすいアニメを見続けた悪癖からか、「わたしを離さないで」を高校生のころのように、集中してみられなくなってしまったとも感じたり)


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2

序盤に現れる手術台と、それをみつめる女性。医療ものだったら嫌だなあと、不安になっていたら、その女性の子供の頃の、厳しい特別な学校へと舞台が変わった。

新任してきた先生が、生徒が柵の外に出ないのは、これまで出て行った生徒たちがみな、残酷な死を迎えたからと説明されるシーン、

また喫茶店でのオーダーの仕方といった不可思議な授業辺りから、次第にその異様さに僕は気がついていく。

また主人公の女の子キャシーが、いじめられてはキレて、心のそこから叫んでる男の子トムの所へ駆け寄った時、顔をその子にひっぱたかれてしまう。

映画「告白」とまではいかないが、先ほどの新任が生徒たちに対して、突然「将来の夢」の話をする。アメリカへいって俳優になる人、スーパーマーケットで働く人など…。しかし君達はそうじゃない。

(以下、物語の結末までネタバレしております。)










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3

君達はドナーとして限られた命が与えられたクローン人間なんだと。

「ギャラリー」の意味も、独裁国家のような強圧的な生徒統制に、忠実に従う子どもたちのことも、分からないまま淡々と映画は進んでいく。

生徒が好きな買い物ができるというバザー。キャシーは特にほしいものがなく座ってた、そんなキャシーがトムから、彼もよく分からないというカセットテープを貰う。Never Let Me Goという、neverを繰り返す、ともすれば官能的な女性のラブソング。



いつの間にか、トムに意地悪をしていた女の子ルースが彼とくっついてしまった。

そうして寄宿学校の話が終わり、二十歳辺りで若い男女同士で合同生活をするように。性とセックスに対する距離のある描写。キャシーがあのカセットをイヤホンで聞いて隣室のセックスに耳を背け、ゴミ箱に捨ててあったエロ本を一枚一枚腹立たしくも読み続けたり。それがなぜかは後ほど説明される。

ルースの「本体」の噂を聞くも、結局会えない。愛し合う二人になったら、臓器提供を延ばしてくれる噂の虚像。それは更に十年がたち三十前後になった、主人公ら三人をすこし翻弄させる。

この映画はクローンというテーマの割に、はっきりときた主張をもっていない。ただ情景を淡々と写していく。それがとてと印象的だった。心理描写や感情もまたそう。

だけど、最後の最後になって、車を途中で止めさせたトミーが、子どもの頃のように、悲痛に叫び声をあげる。駆け寄ったキャシーには、あの時とは違って、しっかりと抱きしめる。そのシーンはやっぱり胸を揺すぶった。

後は、ルースの淡々と臓器を出す手術で命を落とす描写を、最後まで距離を離してやっていて、彼女に人間の尊厳があるのか、実験台となる動物のように冷たい対象物として最後のカットがきられたのもまた、印象的だった。

それに対するトミーの手術台の描写。麻酔がきくまで横を向いてキャシーの方を強く見つめる。手術のようすは描かれず、命を落としたという結末だけが、キャシーによるエピローグで伝えられるに過ぎない。キャシーの結末もまた描かれない。

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4

この映画は、普段評判を気にしてから劇場に足を運ぶのに、ネットでもTwitterでも雑誌でもテレビでも、あまり評判になっていなかった(地震時期と公開時期が被ってしまったんだろうね)。そのため情報を全く満たしてみないで、予告編すらみないで映画をみた珍しい映画(観たのは先週水曜)。公開終了がその週の土曜日と目前で焦っていったっていうのもあるけれど。事前にカズオイシグロの本を図書館で借りたけど、結局一冊も読まなかった。

後日録画したテレビの特集をみたり、原作後書きを読んだり、今日4/17にやってた教育テレビによるカズオイシグロの特番をみて、思いをめぐらす。

命に対する価値観が、進路の失敗と、大震災で、大きく揺らいでいたこの時に、この作品に出会えてよかったと思う。今後イシグロ作品にがっつりはまるのかどうかは分からないけれど。まずは借りた本を読んでみよう。そういえば今週は受難週-

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